2006-01-01から1年間の記事一覧

レオナルド・シャーシャ「真昼のふくろう」

「殺しの時間」でこの作者が紹介されていたので手に取った。 イタリアの巨匠による社会派アンチ・ミステリである。 シチリア島でのある日、満員のバスの中で男が殺される。多くの人に目撃されていたにもかかわらず、その場にいた人間はすべて、そんな事件は…

西垣通「基礎情報学」

現代情報社会というような言い方をするとき、その情報とは何を意味しているのか? 実のところ、その意味は極めて曖昧である。 日ハム優勝と言ったって、野球を知らない人にとっては価値が少ないし、そもそも日本語を解さなければ価値はゼロだ。日ハム優勝と…

萩原恭次郎「死刑宣告」

最近Wikisourceなるものの存在を知った。 青空文庫にくらべるとまだまだ量は少ないが、萩原恭次郎の「死刑宣告」がすべて電子化されているのに感激したので紹介しておく。 →死刑宣告 - Wikisource私は詩はそれほど感心があるわけではない。というより「詩は…

鷲田清一「まなざしの記憶」、植田正治写真集

写真に詳しくなかったので、先日の「美の巨人たち」で初めて植田正治を知った。これはすごいということで、早速、図書館から借りてきた。 「まなざしの記憶」は鷲田清一による植田正治の写真論だと思っていたのだが、植田正治に直接触れているところは少ない…

小栗虫太郎「完全犯罪―他8編」

ひさしぶりに小栗虫太郎スレを見たところ「デスノートは寿命帳のパクリ」という書き込みを発見した(笑) http://book3.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1120106249/ そういえば寿命帳が入ってる短編集は読んでないなと思い出し、この文庫を発掘した次第。収…

Pochakaite Malko「ポチャカイテ・マルコ」

POCHAKAITE MALKO「LAYA」 - モナドの方へ Amazonユーズドで売り出されていたので、ついつい購入。 このころは壷井氏がメンバーにおらず、ヴァイオリンはゲストミュージシャンによるので、 弦の旋律はちょっと弱め。それでもキメラ的な変態さは相変わらずで…

ロバート・J・ソウヤー「スタープレックス」

スペースオペラのプリンアラモード。大ネタ小ネタが盛りだくさん、おいしいとこ取りである。 実はこの手のスタートレック的なSFはあまり読んでいなかったので、ちょっと慣れるのに手間取ってしまった。けれども一度その世界観に没入できると、文字通りハマ…

プログレCD150枚をネット経由で自動連続試聴

プログレ通販でおなじみのMusic Termが自動連続試聴できるプレイヤーの提供を開始した。 プログレCD150枚をネット経由で自動連続試聴 - POSEIDON Daily Newsとりあえず流しっぱなしにして、気に入ったら買うことができるのでかなり便利。単なるwebラジオとし…

井上夢人「プラスティック」

54の断章からなるミステリ。 読み終わってから振り返ってみると、かなり複雑な構成であることに驚かされる。さらに真相は三段構えくらいになっている。と、ここまで書いてしまうと難物かと思われるかもしれないが、それほど読むのに苦労する小説ではない。 …

伊藤俊治「20世紀写真史」

写真に詳しくなかったので、手に取った本。 この本に載っていた写真で知ってたのはウィトキンとメイプルソープくらいだったので、大いに勉強になった。写真が誕生した19世紀では、まだ写真が一般的なものではなかった。20世紀になって、写真は芸術としてメデ…

POCHAKAITE MALKO「LAYA」

プログレ博士こと植松伸夫も一押しというポチャカイテ・マルコ。ブルガリア語で「ちょっと待って下さい」という意味だそうだ。なんとも言えない。 音楽も方もなんとも言えない。民族音楽風でありながら、マグマ的な暗黒の情緒を漂わせ、そこにシンフォニック…

ALI PROJECT「勇侠青春謳」

イントロの音がやや明るいのが気になるが、個人的にはこれまでの楽曲の中で一番好みである。 よくわからないところで、よくわらからない転調をしているところが最高にたまらない。プログレ好きの性である。特に異常にひねくれた間奏は、もうこれだけでご飯三…

ロバート・J・ソウヤー「フラッシュフォワード」

やはりソウヤーはハズレが少ない。本書も大いに面白かった、何より題名がいい。 ある実験の失敗?により人類すべての人間が20年後の未来を数分垣間見てしまった、あるものは望まない未来を、あるものは自分が殺されることを知ってしまう。この状況で人類は…

山口昌男監修「説き語り記号論」

朝日カルチャーセンターで行われた記号論の講義録を元に作られた「説き語り」の本。講師陣も多彩で、内容に拡がりがあるところが特徴だ。口語体で書かれているので、いわゆるガチガチの記号論の本に比べるとはるかにわかりやすいんだけど、用語の説明などが…

ロバート・J・ソウヤー「ゴールデン・フリース」

ソウヤーのデビュー作となるSFミステリ。 前回のフレームシフトはちょっといまいちだったけど、今回はSFとしてみてもミステリとしてみても傑作だった。まず巨大宇宙船のなかで一人の女性科学者が殺される、という描写が犯人の視点から描かれるという倒述…

若島正「殺しの時間」

ミステリマガジンに連載されていた読書にまつわるエッセイ&書評。 主に未訳(連載当時)のものを扱っていて、かなりマニアックなモノも多い。3ページに1冊以上というペースで本が紹介されるというかなりヘビィな内容なので、読んでいるとクラクラしてくる…

今野緒雪「マリア様がみてる―大きな扉 小さな鍵」

若島正の「殺しの時間」が3ページで小説を一本紹介するというヘビィな内容のため、続けて読むのがしんどかったので、マリみてに待避。今回面白いのは、あとがきにある「キャラが勝手に動く」というところ。 小説を設計する段階では、通常ストーリが主でキャ…

マット・マドン「コミック 文体練習」

1つのストーリーを99通りの方法で描き出すという、レーモン・クノーの「文体練習」に激しくインスパイアされた作品。コミックへの翻訳といっても過言ではないだろう。実はあまり期待せずに読んだのだが、思っていた以上には面白かった。クノーへの敬愛と…

ロバート・J・ソウヤー「フレームシフト」

遺伝子をメインテーマに据えたSFミステリ。 我孫子武丸があとがきを書いているだけに、否応なくミステリとしての展開を期待してしまう。遺伝病を抱える主人公がネオナチの暴漢に襲われて、というワクワクさせられる出だし。しかし最終的なオチは、今ひとつ…

養老孟司「からだの見方」

前半は解剖学的な見地から五感や心についての考察、後半は学者然としたおかしみのあるエッセイからなる。 養老孟司はやはり独特の考えの持ち主で、従来の学説を踏まえつつも一見へんてこりんなオリジナルの説を等々と語って見せたりする。個人的には文字の形…

ミシェル・フーコー「自己への配慮」

ちょっと更新を怠けてしまっていた。本書は一週間前に読了していたもの。 本書は「知への意志」「快楽の活用」に続く性の歴史三部作の最後にして、フーコー最後の書でもある。序盤は前作の続きという感じで割と分かりやすいのだが、後半にかけていかにもフー…

京極夏彦「邪魅の雫」

いわゆる京極堂シリーズの第八作目。長年待たされた前作がアレだったんで、今回も大丈夫なのかなあと思うっている読者も多いことだろう。セカイ系っぽい出だしに一抹の不安を覚えながら読み始めたところ、前半のあまりの普通さに参ってしまった。 妖怪が現れ…

「邪魅の雫」

Amazonから「邪魅の雫」が届く。一緒に京極夏彦全作品解説書という非売品の小冊子がついてきた。これ年表とかもついていてかなり良いアイテムなので、書店で買う人は注意してください。あと「姑獲鳥の夏」が立川談春の朗読でオーディオブックになるそうで、1…

横山正「箱という劇場」

箱コレクターであり建築が専門の作者が、箱というキーワードのもとに徹底的にこだわったエッセイ集。 日曜美術館で紹介されていたので、衝動的に購入したもの。 箱マニアの人は必読だ。 箱という劇場 箱といえばはずせないコーネルやデュシャンのグリーンボ…

本人降臨

コメント欄に篠田真由美先生が降臨。(本人ではあるが当人ではない) →http://blog.taipeimonochrome.ddo.jp/wp/markyu/index.php?p=811 taipeimonochromeさんの対応に感動したので、ついつい紹介しちゃいました。 (まずかったら言ってください)

演劇実験室◎万有引力「ブラック イン ザ ダーク」

幻想肉体詩劇 ブラック イン ザ ダーク 暗闇に燃え上がる肉体の交響即興詩 台本◎井内俊一 演出・音楽・美術◎J・A・シーザー 暗黒大陸に向かったまま消息を絶った父親を捜しに出かける息子達、しかし世界は暗闇で覆われつつあった。暗黒大陸なんていうもの…

園子温「紀子の食卓」

「自殺サークル」の続編、解決編である。「自殺サークル」ではそのメッセージ性よりも、デッドコースターばりのグロテスク描写ばかりが印象に残っていたので、また酷い気分になるんだろうなあと、ある種の期待と覚悟をして鑑賞したのだが、良い意味で期待を…

上野の森美術館「ダリ回顧展」

初日に行ったのが間違いだったのか、入場まで60分待ちだった。 中に入っても当然、スローベルトコンベアー状態。そのおかげでゆっくりと鑑賞することができたので、それはそれで楽しめた。 とにかくダリは子供の頃から絵が巧い。同時代のマグリットやデルヴ…

ALI PROJECT「.hack//roots O.S.T.2」

まずは一曲目の「KING KNIGHT」。 ここ最近、メロディラインがどんどん変態的(褒め言葉)になっていっているが、そのひとつの頂点として「KING KNIGHT」はガツンと来る。片倉センセーの狂気を感じる一作。これだけで確実に元が取れる。 CMで流れてるサビ…

泡坂妻夫「生者と死者」

「しあわせの書」に続くビックリ本。 本書はフランス綴じになっていて、いくつかのページが袋とじになっている。まずはその状態で(つまりページを飛び飛びに)読むと、その名も「消える短編小説」という題の短編小説として読める。 次に袋とじを切り開くと…