伊藤俊治「20世紀写真史」

写真に詳しくなかったので、手に取った本。
この本に載っていた写真で知ってたのはウィトキンとメイプルソープくらいだったので、大いに勉強になった。

写真が誕生した19世紀では、まだ写真が一般的なものではなかった。20世紀になって、写真は芸術としてメディアとして活躍を始める。本書ではジャーナリズムにおける写真の役割と、芸術としての写真の発展を描いている。
面白いのは、現代美術や現代哲学との強い相関関係があるところ。たとえば20世紀初頭では新即物主義の人々がそれっぽい写真を撮っているし、後半ではフェミニズムの影響が見えてくる。

また写真の哲学的考察も忘れていない。
写真とは時間と空間を瞬時に閉じこめてしまう芸術様態である。しかし本書で紹介されているような素晴らしい写真には、芸術的な一瞬のスナップショットには偶然とは言い難い神的な必然性が立ち現れる。フレームの内側に存在する光景以上のモノを感光しているのである。
ここにおいて写真は絵画などの表象芸術とは一線を画すると言えるだろう。

写真家の名前がドカスカ出てくるのが無知な自分にはちょっとしんどかったが、それなりに20世紀写真史を概観できたような気がする。というよりも写真史と20世紀の歴史を重ね合わせることにより、筆者の言う「写真とは、ひとつの二十世紀の黙示録の形式ではなかったか」という言葉が少しは理解できた。

余談

(恐らく)有名な写真が多数載っておりパラパラめくってるだけでも楽しい。個人的に気に入ったのはダイアン・アーバスの写真かな。