2005-01-01から1年間の記事一覧

今野緒雪「マリア様がみてる――未来の白地図」

誕生日にして今年最後の記念すべきエントリーである。来年は戌年なので、まさにトリだ。本当はロラン・バルトの「神話作用」が今年最後になるはずだったのだが、諸事情から読み終わらず……というわけで、色々な意味で記念すべきラストは本書である。なんてい…

ジェイ・イングラム「脳のなかのワンダーランド」

今、一番ホットな分野といえば、やはり脳科学だろう。人間の脳はとにかく不思議だ。 本書はそんな不思議な現象を引き起こす脳について、身近な話題からまれな現象まで、数多くの事例を紹介している。目次は以下の通り。 灰白質 無視 ホムンクルス 顔 記憶 夢…

ニコラウス・クザーヌス「学識ある無知について」

反対物の一致(コインシデンティア・オポジトルム)で有名なクザーヌスの名著。 クザーヌスは15世紀に活躍した神学者・哲学者。ルネサンス哲学の代表格である。 ブルーノ、パスカル、ライプニッツ、ヘーゲルらに影響を与え、近・現代哲学の本を読んでいて…

Ali Project「月光ソワレ3」

Ali Project「神々の黄昏」 - モナドの方への曲がメインで、いつもの過激な感じは抑えつつ、椅子に腰掛けながらしっとりストリングスというコンサート。 とにかく、曲の作りといい、音の作りといい、うっとりとしてしまう。そういう世界のなかで法悦や忘我を…

靖國参拝

月光ソワレ3が九段会館で行われるということで、日本国民なら一度は参拝しておくべき靖國神社へ行って参りました。初参拝です。まずは参拝。二礼、二拍手、一拝。とりあえず国家安泰ということで、戦争だけは勘弁してくださいと拝んできました。次に遊就館…

小川洋子「薬指の標本」

エンターテイメントというよりは文学という方に属する作品なんだろう。 文学的な作品というと、どうしても薬指がなんちゃらのメタファーだとか考えたくなってしまうものだが、小川洋子の作品というのは、そういう見方をすると逆につまらなくなってしまうよう…

ローレン・スレイター「心は実験できるか」

20世紀に行われた心理学実験にスポットを当てた本。とりあげられているのは以下の10点。 スキナー箱を開けて―スキナーのオペラント条件づけ実験 権威への服従―ミルグラムの電気ショック実験 患者のふりして病院へ―ローゼンハンの精神医学診断実験 冷淡な傍観…

ダグラス・アダムス「銀河ヒッチハイク・ガイド」

映画化のおかげで待望の新訳復刊を果たしたSFコメディの傑作。とりあえず、銀河バイパスの建設のためにあっさりと地球が消滅するところから始まる、この小説。最終的には人類の存在意義というとんでもなく高尚なテーマにも接近するのだが、基本はコメディ…

風邪博士

TATATATATATATATATA! POPOPOPOPOPOPOPOPO!というわけで風邪です。風邪博士*1です。 情報主義の功と罪 - モナドの方への続きを書こうと思ってるのですが、もう体調というか肉体のいたるところが、いかんです。まあ風邪はいいとして、問題は眼です。 3年前に…

竹下節子「バロックの聖女」

連日ストップ高を記録していた修道女(シスター)萌えブームも落ち着いてきた昨今、みなさまいかがお過ごしでしょうか? さて修道女・聖女萌えと言えば当然、ベルニーニ作の聖女テレジアの法悦を想起するのは異論のないところ。 →http://www.istanbul-yes-is…

J・L・オースティン「言語と行為」

いわゆるスピーチアクト理論の始祖で、昨今でもよく眼にするパフォーマティヴとかコンスタティヴとかいう概念を提唱し分析したオースティンの名著である。ちゃんと勉強しようと思って読んだ。オースティンは、発言には事実確認的(コンスタティヴ)なものと…

Ali Project「神々の黄昏」

Ali Projectのストリングスアルバム第三弾。 Visconti Chic(instrument) 病める薔薇 アンジェノワールの祭戯 百合と夜鶯 彼と彼女の聖夜 蜜薔薇庭園 月光夜 神の雪 Vanitas(instrument) マリーゴールドガーデン(Albeniz) JE TE VEUX(Erik Satie) 優雅…

竹本健治「虹の獄、桜の獄」

竹本健治・文、建石修志・画による大人のための暗黒童話。 小説とも画集とも言え、二人の見事なコラボレーション作品となっている。物語には一貫するテーマがあるように思える。それは、見てはいけないもの、知ってはいけないこと、に対する恐怖と憧れだ。 …

ウィリアム・J・ミッチェル「リコンフィギュアード・アイ」

デジタル画像時代の写真論。ただしデジタル画像となれば写真もCGもデータとしては同じなので、実際には写真+CG論である。本書の面白いところは、人文的な写真論とデジタル画像の技術論がセットになっているところだ。 もっとも技術論の方は、10年以上前…

情報主義の功と罪

概要 あらゆるものがデジタル化されてゆく。特に文章のデジタル化は顕著だ。 「情報収集のための11の質問」も大事だけど、もっと大事なのは人生と情報との結びつきである。 そこで情報主義の功と罪ということで、以下の順に話を進める。 デジタル化してるん…

アルフレッド・ベスター「虎よ、虎よ!」

アルフレッド・ベスター「分解された男」 - モナドの方へに引き続き、SFの古典。宇宙に放置された男の復讐劇である。「分解された男」もそうだったが、筋立て自体はわりと古典的。悪く言えばありがちだ。こういう復讐劇はこれまで何度となく書かれてきただ…

Access hacks

なにげにAccessを仕事でよく使います。 AccessでO/RマッパーやSQL作成補助クラスを作ってしまうくらい使い込んでいます。Access最大の問題は、(便利な)裏技が多いくせに、細かい機能について詳細に書かれた本がほとんどないというところ。ちゃんとコードを…

「解剖学の少女達」

久しぶりにその気になったので、小説なんぞを書いてみました。一年以上ぶりなのでリハビリを兼ねての執筆です。→「解剖学の少女達」(pdfとtxtの詰め合わせ)モナドロジーってアンチ・セカイ系なんじゃないだろうかと色々考え、そのへんをメモっておこうとい…

茂木健一郎「クオリア降臨」

文學界で連載されていた文学を巡るエッセイ。 いわゆるクオリア主義の立場から文学を、そして現代を批評する試みであり、これまでの著作の中でもっとも科学者っぽくない。と言っても形而上学者として振る舞っているかといえば、そうでもなく、科学のダメなと…

勝手に人力検索もなど

リファラを眺めていると、なにかを求めて検索をし、その結果、この地に迷い込んだ人たちがいる。しかし必ずしもここに答えがあるわけではない。 それでは可哀想なので、面白そうなクエリだけ勝手に調べてみました。 資生堂 アール・ブリュット 図録 google:…

ゴンブローヴィチ「バカカイ」

ゴンブローヴィッチだったりゴンブローヴィチだったりするゴンブロヴィッチの短編集。 「バカカイ」って何よ?と皆さん思うだろうが、例によって特に意味はなく。ゴンブロヴィッチの造語である。しかも「バカカイ」という短編があるわけでもない。あくまで短…

デザインフェスタ

新橋集合の後、ガネー舎でスープカレーを食べ、ハウス・オブ・シセイドウでアール・ブリュット展を二度目の鑑賞。と私のわがままコースを堪能した後に、デザインフェスタへと向かった。デザインフェスタは作品のアベレージ自体は決して高いわけではないが、…

岡崎勝世「世界史とヨーロッパ」

id:virginiaさんに勧められて読んだ本。 いまいち歴史ものというのは苦手なのだが、数ページ読んだところで、この本が世界史の本ではなく「世界史」史の本であることに気づき、がぜん、面白く感じてきた。 なるほど、これは批評理論みたいなもんなんだ。ボル…

奇談

諸星大二郎の妖怪ハンターシリーズ「生命の木」の映画化。原作が短編ということもあって、いろいろとエピソードを膨らませている。同じく妖怪ハンターシリーズの「天神様」のエピソードをもとに追加されているようだ。主にヒロインまわりの神隠しの話がこれ…

SAW2

見ていてイターイ描写が連発される、サスペンス映画。駄作になりやすい続編にしては上手くまとめられている。とりあえずは満足のでき。難点を挙げるなら、閉じこめられる登場人物があまりにも馬鹿すぎるということだろう。 実際、あの状況になったらああなる…

「芸術新潮11月号」

今週末にデザイン・フェスタへ行く予定なのだが、ついでにもう一度アール・ブリュット展を見ようと思っている。そこで、予習として芸術新潮の特集を(ようやく)読んだ。展示されている作品だけでなく、珍しい作品も掲載されているので、アール・ブリュット…

西本智実「幻想交響曲」

はじめに書いておこう、今日の主旨は「智様」を使うことにある。たまにはそういう日もあるのだ。 というわけでAmazonから智様のDVDが届いた。 演奏:チェコ・ナショナル交響楽団、指揮:西本智実。収録演目は、ヴェルディの「運命の力」序曲、ベルリオーズの…

杉浦康平「アジアの本・文字・デザイン」

主に書籍を手がけるグラフィック・デザイナー杉浦康平とアジアのデザイナーとによる対談集。 「本とコンピュータ」に連載されていた対談が収録されているためもあろうか、デジタル技術を意識した発言が多い。コンピュータにおける文字をただのコードとせず、…

アヴラム・デイヴィッドスン「どんがらがん」

「だれが定義しても異色作家」アヴラム・デイヴィッドスンの短編集。 どんがらがんな夜 - モナドの方へでも書いたが、予想通り説明することが非常に難しい小説だ。というか説明しようとすると、とたんにつまらなくなってしまう。ストーリーも設定もデイヴィ…

「秘神界」

日本人執筆者によるクトゥルー神話アンソロジー「秘神界」は英語にも訳されているそうで、どれどれと調べてみると、なんとまあ素晴らしい表紙。→http://www.kurodahan.com/e/catalog/titles/j0011.html クトゥルー神話+伊藤若冲とはなんとも粋じゃありませ…