2006-01-01から1年間の記事一覧

今野緒雪「マリア様がみてる クリスクロス」

誕生日にして今年最後のエントリーは去年と同じくやっぱこれ。別にわざわざこの日にあわせたわけではない。新刊チェックをしそこねたため、買うのが遅れてしまっための不可抗力である。今回は宝探し大会。微妙な謎が提示される前編と、微妙な謎解きが行われ…

グレッグ・イーガン「ひとりっ子」

今をときめくハードSFの雄。イーガンの最新短編集。 発表年が1990〜2002年までにわたっているので、時代による作品の変遷を楽しみながら読み進めることができる。 行動原理、真心 科学によって心を完全にコントロールできるテクノロジを背景にした2作品。…

永井均「ルサンチマンの哲学」

哲学学者が多い日本において、数少ない哲学者。 単に資料を漁って丹念に調べました、ではない真剣勝負な思想がそこにはある。雑誌等に掲載されたニーチェと道徳哲学についての文章を集めたモノで、キーワードとなるのはタイトル通りルサンチマン。またそれに…

レヴィ=ストロース、中沢新一「サンタクロースの秘密」

とりあえずクリスマスネタを投下しておく。ツリーだサンタだ気取りやがって、キリスト教のお祭りなんざ、俺様には関係ないぜ!と中途半端に知ったか硬派ぶる前に、これを読んでおいた方がよいのでは? という一冊。 サンタ炎上事件とか、サンタは祖先の霊で…

今敏「パプリカ」

一言でいうと、デブでノロマでも、天才なら大丈夫という話。ちがうか。夢に潜り込む装置が盗まれて、悪用されるというストーリー。どんどんと欲望がむき出しになってゆくところが見所か。 夢の扱いは、フロイトとユングを足したような感じ。抑圧された無意識…

ALI PROJECT「月光ソワレIV」

これが本日のメイン。やはりストリングスは生だと全然違う。 今月に発売された「Romance」の曲を主軸に、過去のストリングスアルバムの曲なども交えつつのコンサート。 基本的にはCD収録通りの演奏だったんだけど、「さいごの戀」だけは間奏のアレンジがゴ…

「夜想耽美展」

旧ペヨトル工房、ステュディオ・パラボリカ主催による嘆美をテーマにした作品展。 参加作家は楠本まき、野波浩、松井冬子、丸尾末広、山本タカト、佳嶋、恋月姫などなど。恋月姫の人形は新作とHP書いてあるんだけど、同会場で行われた「少女娼館展」での人…

ジョルジュ・ペレック「美術愛好家の陳列室」

文学実験工房ウリポのエース、ペレックの中編。 いかにもペレックらしい短いながらもピリリと効いた、味のある作品である。本書のテーマはギャラリー画と入れ子構造。 ギャラリー画とは18世紀のイギリスで流行した絵画で、大量の絵画を並べ立てた部屋を絵に…

イヴ・K. セジウィック「男同士の絆」

男は男同士で、女性を排除するかたちで社会構造を作り出すホモソーシャルという概念を世に広めた一冊。若桑みどり先生も一押しということで、ようやく読んだ。注意すべきは以下の2点。ホモソーシャルが女性嫌悪と、同性愛恐怖の裏返しからできているという…

「美術愛好家の陳列室」「他者の声 実在の声」「グラックの卵」

注文していた本が、どかすか届く。 とりあえず優先順位一位はペレック。美術愛好家の陳列室posted with amazlet on 06.12.19ジョルジュ ペレック Georges Perec 塩塚 秀一郎 水声社 売り上げランキング: 98744Amazon.co.jp で詳細を見る他者の声 実在の声pos…

野口英司「インターネット図書館 青空文庫」

著作権延長問題が盛り上がっているのもあり、ちょっと気になったので図書館から借りてきた。 主に読みたかったのは、黒死館殺人事件を入力校正した工作員ロクス・ソルス氏のインタビュー。もうひとつは著作権延長問題について論じている富田倫生氏の文章であ…

古川日出男「ルート350」

古川日出男の小説を前から読もう読もうと思っていたんだけど、いきなり超大作に手を出す勇気がなかったので、まずは短編集ということで手に取った。 8つの短編からなる短編集である。極めて現代的な作風で、文体がコントロールされていて、非常に器用な作者…

「オールアバウト シュヴァンクマイエル」

ルナシーのパンフレットも兼ねてのシュヴァンクマイエル本。 やたらと豪華な執筆陣による解説、数々の裏話、シナリオ完全収録というのも嬉しい。読んで驚いたのは、ルナシーに登場する精神病院の患者は本物だということ。確かに妙に素人っぽいのに真に迫って…

ウンベルト・エーコ編著「美の歴史」

「薔薇の名前」などでおなじみイタリアの碩学ウンベルト・エーコ編著による、時代における美の変遷を追った文化史。 古代ギリシャから現代に至るまで、その時代時代を代表する美の規範、美の観念を概説しているので、この一冊で一通り眺めることはできる。あ…

諸星大二郎「スノウホワイト」

面倒なので漫画の感想は書かないのだけど、諸星大二郎は思わず書きたくなってしまう。本作も「トゥルーデおばさん」に続くグリム童話翻案もの。巻末に作者による詳しい解説もあって、元の話を知らなくても大丈夫。 とりあえず気になったモノをいくつか。 奇…

ALI PROJECT「薔薇獄乙女」「ROMANCE」

Amazonから2枚届く。同時発売のおかげで送料に悩まされなかった。 まだそれほど聞き込んでないんだけど、とりあえず、ざっくりと感想を。 薔薇獄乙女 あまりタイトル通りの曲調ではないので、意外性があった。 でも極楽荊姫と比べるとインパクトが劣るか。 …

ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ「赤い右手」

これはひどい!と思わず叫びたくなる名作。いや迷作。 その半分どころか99%がミスリードで構成されているという優しさのカケラもない作品。バファリンを飲ませたい。 ここまで読者の期待を無惨にも裏切る小説があっただろうか、恐らくすれっからしの読者ほ…

「スノウホワイト」「セバスチャン・ナイトの真実の生涯」

Amazonから届く。どちらもかなり面白そうな感じ。 スノウホワイト グリムのような物語posted with amazlet on 06.12.04諸星大二郎 東京創元社 売り上げランキング: 70Amazon.co.jp で詳細を見るセバスチャン・ナイトの真実の生涯posted with amazlet on 06.1…

ルシール・アザリロヴィック「エコール」

カルト少女映画。いやー、これは困る。 臆面もなくビアンカ萌え〜とか言える映画だったら気楽なんだけど、快楽的に味わうには負の部分が多すぎるので、単なるロリ好きに荷が重い。逆に、そっちに興味ない人はロリロリしやがってプンスカ!となってしまうかも…

デザインフェスタ

駕籠真太郎がブースを出すということもあって、行って参りました。 そこで印度で乱数特別編を購入。 駕籠先生からサインを頂けて、少しお話もできたので、駅前シリーズとイタロ・カルヴィーノ「見えない都市」の類似点を指摘しておきました。

アーサー・C・クラーク「幼年期の終り」

とりあえず古典も押さえておかないとということで読んでみた。 うーむ面白い。確かにこれは古くならない普遍的な作品である。現代のSFにもある壮大未来ヴィジョン系の元祖ということになるのだろうか。読んでいる間に、色々な漫画や小説が連想させられた。…

入不二基義「ウィトゲンシュタイン 「私」は消去できるか」

薄い割にはまとまりがよいシリーズ・哲学のエッセンス。ウィトゲンシュタインというよりは入不二センセーということで手に取った。このシリーズは入門書ということなのだが、本書は「ウィトゲンシュタイン」も「論理哲学論考」も知らない人がいきなり読むの…

フィリップ・ドゥクフレ「SOLO」

母親の付き添いで見てきた。本当はダンスなんだけど、カテゴリをもうけるのが面倒だったので「演劇」で。「SOLO」というタイトル通り、ドゥクフレ本人が1時間以上にわたって一人で公演を行う。しかもセットや小道具もほとんどなく、使うのはカメラと照明く…

ヤン・シュヴァンクマイエル「ルナシー」

端的に言うと、精神病に悩む男がサド侯爵めいた男にたぶらかされつつ解法療法を受けるという話。 これまでのシュヴァンクマイエル映画の中では、台詞も多く、筋やメッセージもハッキリしててわかりやすい方だろう。解放された精神病棟という設定からしてドグ…

トーマス・M・ディッシュ「プリズナー」

カルト的な人気を博す「プリズナーNo.6」のノヴェライズ。といっても異色作家ディッシュなんだから、ひとひねりもふたひねりもある。 引退した元情報部員の目覚めたその村には名前がなかった。そればかりか、村人たちはひとり残らず番号で呼ばれている。本屋…

川崎敏和「バラと折り紙と数学と」

「ビバ!おりがみ」シリーズで「川崎ローズ」を知ったのは、もう遥か昔。衝動的に亜種が知りたくなったので、本書を手に取った。読んでわかったんだけど、自分が「川崎ローズ」だと思ってたのは、実はその改良版である「折りばら」だった。(下記リンク参照…

ロラン・バルト「S/Z」

バルザックの中編「サラジーヌ」を構造主義的、記号論的方法で徹底的に分析した批評の実践である。ちなみに「サラジーヌ」は本書の付録としてついてくるので、読んでない人も安心だ。どのくらい徹底しているかというと、ひとつひとつのセンテンスを精読し、…

ヤン・シュヴァンクマイエル「不思議の国のアリス」

ヤン・シュヴァンクマイエルの図案による「不思議の国のアリス」が届いた。 新作「ルナシー」が公開開始したということで、続々と関連書籍が出版されていて、にわかにシュヴァンクマイエル祭りのご様子。ファンとしては嬉しい限りだ。技法的にはコラージュと…

クシシュトフ・キエシロフスキー「ふたりのベロニカ」

ポーランドとフランスで、同じ年、同じ日、同じ時刻に生まれたふたりの少女。どちらもベロニカという名前で同じ姿形をしており、音楽の才能があった。そして先天的に心臓を患っているのも一緒。お互いの存在は知らなかったが、どこかでもうひとりの自分を感…

田中敏郎「不思議の森の裁判」

建石修志が目的で購入したモノ。 言うなれば「暗号の国のアリス」で、アリスが迷い込んだ不思議な森の住人は皆、暗号で話すのだった。 解読法と解読文は巻末袋とじにあるので、知識ゼロでも一応楽しめる。それなりに暗号に詳しい人なら、解き方の推測はすぐ…