2007-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ブッツァーティ「神を見た犬」

各種書評等を読んで、自分向けっぽかったので読んでみたら、大当たりだった。短編、それも非常に短いものが多く、オチをしっかりつけるというところは星新一に似ている。星新一が悪魔を登場させることが多いのに対し、ブッツァーティはお国柄のせいか神や聖…

マーシャル・マクルーハン他「マクルーハン理論」

「メディアはマッサージだ!」でおなじみ、TVの伝道師、メディア論の鼻祖、マクルーハンの論文と、それに共感する数人による論考集。 この本は1967年に「マクルーハン入門」というタイトルで出版された古い本であるが、21世紀を迎え「電子メディアの可能性…

「先生とわたし」「Self-Reference ENGINE」

最近、tumblrとtwitterのやりすぎという典型的な理由で更新が滞っている。 しかしながらtwitterで、色々と刺激をもらっていて、これはこれでいいかなと。 そんなこんなでtwitterをやっていたところ、「先生とわたし」を読めというありがたい指令を頂き、高山…

濱岡稔「ひまわり探偵局」

文芸社の良心、濱岡稔。というか文芸社の作品は濱岡稔以外は読んだことがないんだけど…… 前二作は殺人事件を扱ったものだったが、今回はほんわかムードの日常系探偵もの。ムーミンパパのようなおっとりとした名探偵と妙にノリのいい助手を主役にすえ、心温ま…

東京芸大美術館「芸大コレクション展 歌川広重《名所江戸百景》のすべて」

実はこれまで浮世絵を美術館で見て、感心したことがなかった。そもそも浮世絵は、トレーディングカードのように手持ちの小遣いから少しずつ買っていって、夜中に一人でニヤニヤしながら見つめるというのが正しい鑑賞法のように思えてならないからだ。 今なら…

東京芸大美術館「金刀比羅宮 書院の美」

金刀比羅宮に関しては全然知らないのだが、若冲に惹かれて。そんなに期待していなかったんだけど、良い意味で期待を裏切られた。 金刀比羅宮の書院を間取りそのまま持ってきていて、現場の臨場感を再現しているのが今回の展示の特徴だ。幾つかは模造品がある…

「ユビキタス・メディア: アジアからのパラダイム創成」基調講演

生スタフォードを見たくて、id:ikuyaさんを誘って「ユビキタス・メディア: アジアからのパラダイム創成」(UMAT)の基調講演を聞きに行ってきた。会場入りしたら、周りの人たちがみんな賢そうな人ばかりで参ってしまった。キットラーはカッコイイしさ。とま…

今野緒雪「マリア様がみてる フレーム・オブ・マインド」

例のシリーズの3冊目の短編集。 いわゆる本編のオマケ的な作品もあるが、舞台設定が共通しているだけの独立した作品も多い。今回は、この独立した、いわば脇役が主役の作品がとてもよかった。本編の方はみなが主役級なわけで、それなりに努力して、それなり…

平野嘉彦「ホフマンと乱歩 人形と光学器械のエロス」

ホフマン「砂男」と江戸川乱歩「押し絵と旅をする男」を比較して読んでみようという、ありそうでなかった文学研究書。 この二作の共通点は、読んでいる人ならばすぐにピンとくるはずだ。主人公が美しい女の人形に恋をするということと、望遠鏡が重要な役割を…

カリンティ・フェレンツ「エペペ」

解説に、蛇状曲線体でマニエリスム的文体がどうのとか書いてあったので、とんでもない奇書なんじゃないかとビビっていたのだが、読んでみると普通に面白い小説だった。言語学者のブダイは学会に出席するためにヘルシンキに向かう。しかし搭乗する飛行機を間…

ゲリー・ケネディ ロブ・チャーチル「ヴォイニッチ写本の謎」

筆者の一人ゲリー・ケネディが親類の葬式に出席した際、自分の遠い縁者にヴォイニッチという人物がいて、奇妙な写本を発見したことで有名だという話を知る。その話に好奇心をくすぐられ、ついにはヴォイニッチ写本の現物に対面する。そのときの感動から本書…

デヴィッド・フィンチャー「ZODIAC」

実際におきた連続殺人事件であるゾディアック事件を題材にした映画。 ゾディアック事件といえば通り魔的殺人、警察をあざ笑うかのような挑戦的な犯行声明文、そして新聞社に送りつけられてくる暗号文と、まさに事実は小説よりも奇なりという事件である。犯人…

アルフレッド・ベスター「ゴーレム100」

幻の奇書と呼ばれていたベスターの作品がついに邦訳された。間違いなく今年一番の問題作。最高にぶっ壊れている。あらすじは8人の蜜蜂レディたちの集合無意識でできた変幻自在のゴーレム100を巡る物語なんだけど、その妄想世界に突入してからは完全にぶっ飛…