ブッツァーティ「神を見た犬」

各種書評等を読んで、自分向けっぽかったので読んでみたら、大当たりだった。

短編、それも非常に短いものが多く、オチをしっかりつけるというところは星新一に似ている。星新一が悪魔を登場させることが多いのに対し、ブッツァーティはお国柄のせいか神や聖人がよく登場する。(「天地創造」「聖人たち」「わずらわしい男」)
短いながらも深いテーマを扱っていたりするところはボルヘスっぽくもあり(「戦の歌」「コロンブレ」など)、病院の不条理なシステムを扱った「七階」ではカフカ的な一面を見せる、と思いきやSF的な話があったする。また「一九八〇年の教訓」では、わずか十数ページにDEATH NOTEを圧縮してみせたりする。
イタリアと幻想文学つながりということでカルヴィーノを連想するのも難しくない。古今東西のさまざまな作家を思い浮かべることはできるのだけど、ここまでくれば、これぞブッツァーティだ、と位置づけた方が早いだろう。

22篇も短編を収録しておきながら、どれひとつハズレがない。古典新訳ということで、選りすぐりの短編ばかりを選んでいるのだろうが、それにしてもこの歩留まりの良さは驚嘆に値する。読み終えた頃には、もっともっとブッツァーティの作品が読みたいよ!と渇望してしまったほどだ。

神を見た犬
神を見た犬
posted with amazlet on 07.07.31
ブッツァーティ 関口 英子
光文社 (2007/04/12)
ISBN:433475127X

余談1

解説によると、ポップアート風の漫画に私的な文章を加えた「劇画詩」というブッツァーティの作品があるとのこと。ぜひ読んでみたい。

余談2

もしも「アインシュタインの約束」のオチがわからない人がいたら、アインシュタイン第二次世界大戦時に何をしていたかを調べること。