ブッツァーティ「神を見た犬」
各種書評等を読んで、自分向けっぽかったので読んでみたら、大当たりだった。
短編、それも非常に短いものが多く、オチをしっかりつけるというところは星新一に似ている。星新一が悪魔を登場させることが多いのに対し、ブッツァーティはお国柄のせいか神や聖人がよく登場する。(「天地創造」「聖人たち」「わずらわしい男」)
短いながらも深いテーマを扱っていたりするところはボルヘスっぽくもあり(「戦の歌」「コロンブレ」など)、病院の不条理なシステムを扱った「七階」ではカフカ的な一面を見せる、と思いきやSF的な話があったする。また「一九八〇年の教訓」では、わずか十数ページにDEATH NOTEを圧縮してみせたりする。
イタリアと幻想文学つながりということでカルヴィーノを連想するのも難しくない。古今東西のさまざまな作家を思い浮かべることはできるのだけど、ここまでくれば、これぞブッツァーティだ、と位置づけた方が早いだろう。
22篇も短編を収録しておきながら、どれひとつハズレがない。古典新訳ということで、選りすぐりの短編ばかりを選んでいるのだろうが、それにしてもこの歩留まりの良さは驚嘆に値する。読み終えた頃には、もっともっとブッツァーティの作品が読みたいよ!と渇望してしまったほどだ。