デヴィッド・フィンチャー「ZODIAC」

実際におきた連続殺人事件であるゾディアック事件を題材にした映画。
ゾディアック事件といえば通り魔的殺人、警察をあざ笑うかのような挑戦的な犯行声明文、そして新聞社に送りつけられてくる暗号文と、まさに事実は小説よりも奇なりという事件である。

犯人が逮捕されておらず、いまでも捜査が続いていることは周知の事実だ。ということは、この手の映画につきものの手に汗握るスリリングな展開というのを期待してはいけないだろう。個人的にはプロジェクトX的な淡々とした内容を予想しつつ鑑賞した。
そこは、さすがにサスペンスの名手。3時間近い長さを微塵も感じさせない魅せる作りに、まず感心させられた。最後には、犯人を指摘するシーンもあり、ひとまずの納得はもたらされる。演出も効いていて、ドキュメンタリという感じではまったくない。
また犯人と直接対峙するシーンはないものの、地下室に入ってゆく場面では見ていて冷や汗が流れた。直接的な恐怖より、想像に訴える間接的な恐怖の方がより怖いものである。

ただ、いくつか不満な点もある。たとえばゾディアックの暗号を解読したぜ!と快哉をあげるシーンがあるんだけど、どうやって解いたのかがまるで解説されない。相当に面倒なルールなのかもしれないが、そこは簡単にでも説明があれば、より臨場感が増しただろう。
そして一番の不満の点といえば、せっかくダーティーハリーの試写会シーンがあるのに、アンケート用紙回収ボックスの中に警官を潜ませるシーンがなかったことだ。この部分をどう演出するのかを楽しみにしてたのに……

余談

ここだけの話、犯人を追いつめられなかったのはトスキ捜査官の蝶ネクタイに問題があるからだと思う。