東京芸大美術館「芸大コレクション展 歌川広重《名所江戸百景》のすべて」

実はこれまで浮世絵を美術館で見て、感心したことがなかった。そもそも浮世絵は、トレーディングカードのように手持ちの小遣いから少しずつ買っていって、夜中に一人でニヤニヤしながら見つめるというのが正しい鑑賞法のように思えてならないからだ。
今ならば好きな絵だけをtumblrにクリップするという感じだろうか。

そもそも風景画を120点も、それも週一のペースで描かなければならない。普通の絵師であったらマンネリ化してしまっただろう。しかし広重は、見たこともない構図を次々に編み出してゆく。
それだから次の図を見るたびに、「なるほど、こう来たか!」と思わずうなってしまうアイデアの連続なのだ。特に気に入ったのは「四ッ谷内藤新宿」度肝を抜かれる一枚だ。

また風景同士が微妙に関係し合っているところも見所。細かい点に注目しながら、ニヤニヤしながら眺めていただきたい。

ちなみにゴッホによる模写も展示されているが、歌川広重の方が断然レベルが上。格が違う。
浮世絵というのが、素晴らしくレベルの高いものであったということがわかる、そんな展示であった。