東京芸大美術館「金刀比羅宮 書院の美」

金刀比羅宮に関しては全然知らないのだが、若冲に惹かれて。そんなに期待していなかったんだけど、良い意味で期待を裏切られた。
金刀比羅宮の書院を間取りそのまま持ってきていて、現場の臨場感を再現しているのが今回の展示の特徴だ。幾つかは模造品があるものの、すだれをかけたり、水音を流したりと、演出にも凝っていた。
とりあえず、気になった作品を幾つか。

円山応挙「遊虎図」

さすが応挙という作品ばかりなんだけど、やっぱり虎。ふんわりとした毛の中に、鋭い視線。凶暴さと愛らしさの絶妙なブレンドは、ちょっと他にはないだろう。それと応挙の虎は、量産型エヴァに似ているような気がする。(今回の展示よりもっと似ているのがあるんだけれども)

岸岱「群蝶図」

昆虫図鑑からそのまま飛び出してきたように、カラフルで写実的な蝶たち。CGと見まごうような美しさと優雅な群舞は、本物以上に本物らしく見える。
この間で仰向けになって眺めたら、さぞかしよい夢を見られるだろう。

伊藤若冲「花丸図」

若冲の間だけ、他と空気が違う。一見してヤバイ。
ひとつのふすまに精密な植物が描かれている「だけ」。なんだけど、マス目で仕切られたように規則正しく並んでいて、その大きさも綺麗に揃っていて、その様相たるや実に異様なのである。
連想したのは、西洋の驚異の部屋(ブンダーカーマー)だ。この間でずっと眺めていると、頭がおかしくなりそうになる。それほどまでに異様な感じなのだ。この感じは恐らく実物を見ないとわからないだろう。
この間を見に行くだけでも、本展示を鑑賞する価値がある。