今野緒雪「マリア様がみてる フレーム・オブ・マインド」
例のシリーズの3冊目の短編集。
いわゆる本編のオマケ的な作品もあるが、舞台設定が共通しているだけの独立した作品も多い。今回は、この独立した、いわば脇役が主役の作品がとてもよかった。
本編の方はみなが主役級なわけで、それなりに努力して、それなりに報われるように作られている。要するにドラマがある。
しかし「その他」の人たちである脇役にはそこまでのドラマは用意されない。本書でいえば「不器用姫」の報われなさといったらない。でも本当は「その他」の人たちの方が「普通」だ。特にイベントもなく、ちょっとした喜びも勘違いだったりする。「いばらの森」のような激烈な痛みもないけど、それでも誰だって痛い想いは味わっているのだ。
こういう現実が一方でれっきと存在していることで、本編の方も筋が通ってくるというものだ。そういう意味で、今回の短編集は実によくできている。微妙な距離感のエス、軽妙なギャグパート、そして「その他」の人たちの声。それらがひとつのフレームに収まるという構成に、読んでいてよかったなあという感慨をしみじみ味わえた。
マリア様がみてるフレームオブマインド (コバルト文庫 こ 7-54)posted with amazlet on 07.07.16
余談2
シーとかメイはわかるとして、フェって何だよ?