養老孟司「からだの見方」

前半は解剖学的な見地から五感や心についての考察、後半は学者然としたおかしみのあるエッセイからなる。
養老孟司はやはり独特の考えの持ち主で、従来の学説を踏まえつつも一見へんてこりんなオリジナルの説を等々と語って見せたりする。個人的には文字の形について論じる視覚の問題が面白かった。

フーコーの「知への意志」についてのエッセイがあるのが個人的に非常にタイムリー。しかも(フーコー本人と違って?)わかりやすく示唆に富んでいる。
フーコーに、おまえの言うことの証拠を出せ、といっても始まらない」なんて書いてるあたり、「歴史家としてのフーコー」に対する一種の回答とも言えるだろう。

また真面目な話をしているなかに、サラリと恐ろしい毒舌を滑り込ませてくるのも養老孟司の魅力。名調子に乗せられていると意外にスルーしてしまいがちだが、見逃してはもったいない。

サントリー学芸賞受賞作なんだけど、それほど学術的ではない。そもそもちくま学芸文庫ではないし。
なので学術書ではなく、ちょっと濃いめのエッセイとして気軽に読むほうがいいだろう。