横山正「箱という劇場」

箱コレクターであり建築が専門の作者が、箱というキーワードのもとに徹底的にこだわったエッセイ集。
日曜美術館で紹介されていたので、衝動的に購入したもの。
箱マニアの人は必読だ。

箱という劇場

箱といえばはずせないコーネルやデュシャンのグリーンボックスから伝統工芸としての箱まで、作者を含めて箱に取り憑かれた人間たちの箱物語り。
当然、この手の箱というのは空気を入れる箱である。空気を思い出とか記憶となどと言い換えてもいいかもしれない。とすれば記憶劇場として箱が立ち上がってくるのである。

原点としてのワンルーム

四角いひとつの部屋は、ひとつの箱でもあり、ひとつの宇宙でもある。箱としての建築となればル・コルビジェ
また原初の理が閉じこめられた宇宙卵としてのワンルームに、キースラー、ミース、アーキグラムの建築を重ね合わせて見る。

透視図法の黄昏

壮大な虚構としての遠近法と、その復権としてみるキリコの都市デュシャンの大ガラス。
キリコの小説「エプドメロス」にも、その空間と時間のこだわりがあることを確認してゆく。

装丁は建石修志