今野緒雪「マリア様がみてる―大きな扉 小さな鍵」

若島正の「殺しの時間」が3ページで小説を一本紹介するというヘビィな内容のため、続けて読むのがしんどかったので、マリみてに待避。

今回面白いのは、あとがきにある「キャラが勝手に動く」というところ。
小説を設計する段階では、通常ストーリが主でキャラクタが従になるんだけど、ある程度シリーズが続きレギュラーメンバが固定されてくると、この主従関係が徐々に逆転してゆく。
要するにキャラクタがしそうもないことをしないとストーリにならないのに、しそうもないことをさせるにはストーリ的に無理が生じるという二律背反に追い込まれてしまうわけである。一番手っ取り早い方法がイベントを起こしてキャラクタの正確や価値観を変えてしまう方法だが、これは短いスパンで多用してしまうとご都合主義になってしまう。ここにどう折り合いをつけてゆくかがシリーズものを続けてゆくために必要な力量となる。
しかしながら、マリみてほど続いてしまうと、もはや作者の手に余ることも確かだろう。勝手な動きというのが面白くなるかつまらなくなるかというのは、力量云々というよりはほとんど運否天賦の領域である。
興味がなくなれば読者は去るだけだが、作者はそう簡単に戦線離脱することを許されないので、大変だ。

というわけで、「あとがき」を先に読み、「勝手に動き」がストーリにどう影響を与えているか、特に乃梨子の動きに注目して読むと面白い。