奇書

イタロ・カルヴィーノ「不在の騎士」

最近何か物足りないと思っていたら、気づけば奇書エントリーが一ヶ月もないじゃありませんか!一応、奇書サイトを目指していたのに……というわけで、変わった本といったらこの人、カルヴィーノ。ウリポにも参加し、言語遊戯的作品も数多く書いているが、本書…

Luigi Serafini「CODEX SERAPHINIANVS」

日本語なら、ルイジ・セラフィーニ「セラフィーニの写本」「セラフィーニ法典」になるだろうか。 Googleで調べる限り、日本でセラフィーニを紹介しているサイトはないようである。祝!初紹介。 セラフィーニはイタリアのシュールレアリスム系の画家だ。彼の…

カンパネッラ「太陽の都」

「銀河鉄道の夜」に出てくるカンパネルラの元ネタとなったとされている著者によるユートピア小説。 あの、いたいけないカンパネルラを想像していると、面食らうようなごっつく胡散臭い顔立ちをしている。宗教問題で、何度も死刑宣告もくらったり、拷問されま…

浅暮三文「実験小説 ぬ」

浅暮三文は前々から気になっていたが、これまで手を伸ばす機会がなかった。しかし、実験小説とあっては買わないわけにはいかない。むしろ「俺が買わずに誰が買う」的な義務感から購入。 短いなかでアイデアを純粋に実装しているため、噛めば噛むほどというよ…

アルス・ポエティカ(E・A・ポオ「詩と詩論」)

小説を書いたり、詩を書いたりするということとはどういうことなのか? いわゆる文学的な評価に値する美しい文章を綴るためにはどうしたらよいのだろうか? 必要なのは文才か、知識か、はたまた友情努力勝利か?そこで推理小説を創造し、SF、ホラー、ユー…

「加藤郁乎詩集」

前衛俳句界のプリンス、加藤郁乎の詩集。「球體感覺」「えくとぷらすま」など、代表作はほぼすべて収録されている。柳瀬尚紀がフィネガンズ・ウェイクを書く上でリスペクトしたという「牧歌メロン」を読みたくて手に取った。たしかに前衛である。初期の作品…

いや、まだあるよ!(ジョルジュ・ペレック)

表現形式としての技法(レーモン・クノー「文体練習」) - モナドの方への続き。 文学実験工房ウリポのリーダー的存在がレーモン・クノーならば、目映い閃光を放つスターがジョルジュ・ペレックだ。ウリポの実験的手法をクノー以上に徹底的にやってのけた。…

オラフ・ステープルドン「スターメイカー」

ある夜、ヒースの丘に立ったわたしは満天に広がる星空に思いを馳せていた。すると精神が呑みこまれるように「広がる宇宙のなぞ」のタキオン号よろしく宇宙へと投げ飛ばされてしまう。そして時間と空間を超越しながら遙かな銀河空間を旅するのだった。あとが…

表現形式としての技法(レーモン・クノー「文体練習」)

たわいのない日常の光景を、99通りの文体で書いた、ただそれだけの作品。ただそれだけ、で済まされないところがレーモン・クノーの上手いところで、実験的作品でありながら充分エンターテイメント性を兼ね備えている。 とにかく面白いので、人に(無理矢理)…

ザディグ萌え(ヴォルテール)

まあ別に奇書というわけではないのだが、ヴォルテールの短編は時代的にぶっとんでいる。 ミクロメガスはシリウス星人が太陽系を旅するSFだし、ザディグは超絶推理が炸裂するミステリだ。しかもフランス革命より前、十八世紀中盤に書かれた小説なんだから驚…

続けなくちゃいけない、言葉があるかぎりは(サミュエル・ベケット)

同じ言葉を何回も繰り返し呟いていると、だんだん訳が分からなくなってくる。 サミュエル・ベケットの小説を読んでいると、まるで同じ現象が脳の中で起こるようだ。 ベケットの文章は、短く、平易だ。スコープを絞っている限りは、とても読みやすい。だが一…

神は死んだが、なにか?(ニーチェ「ツァラトゥストラ」)

数年前のある日、突然、哲学をやろう!となぜか思い立った。 学校ではデカルト止まりだったものだから近代哲学はさっぱり。とりあえずニーチェでも読んでおけば良いんじゃないの?という安直な気分でツァラトゥストラを買ってきた。(いま思えば、それくらい…

アルフレッド・ジャリ「ユビュ王」

アプサント酒によってシュールレアリストなジャリの代表作。 横文字を並べて、スラップスティック・パタフィジック・コメディとでも表現するほかはない戯曲。特に筋があるわけでなく、ひたすらダジャレ、暴力、下ネタ、パロディーのオンパレード。人形劇バー…

言葉を数えろ(筒井康隆「残像に口紅を」)

なんで「ボキャブラリ解析ツール」を作ったのか…… 頭の片隅にあったのは、筒井康隆の「残像に口紅を」だったと思う。 西洋には伝統的に最も使用頻度の高いeを使用せずに詩や散文を書く、リポグラムという手法があるが、それの日本語版、それもとびきり高度な…

奇書カテゴリ

できるだけ毎日書くために、特にネタがない日は奇書について書くことにする。 自分なり奇書を定義してみると、読んでいて思わず、 「逸脱してやがる」*1 と叫びたくなる本、とでもなりましょうか。 *1:福本伸行「無頼伝 涯」ISBN:4063128644