浅暮三文「実験小説 ぬ」

浅暮三文は前々から気になっていたが、これまで手を伸ばす機会がなかった。しかし、実験小説とあっては買わないわけにはいかない。むしろ「俺が買わずに誰が買う」的な義務感から購入。
短いなかでアイデアを純粋に実装しているため、噛めば噛むほどというよりは、一発ネタという感じ。広がりはないものの、濃縮された「変さ」を味わうことができる。
とりあえず思いつくままに元ネタをリストアップしてみた。

帽子の男

関係ないだろうけど、ジョジョボヘミアン・ラプソディーを思い出した。

喇叭

謎がまったくわかりません。わかったら駄目なんだろうけど。

遠い

スターン「トリストラム・シャンディー」の脱線グラフを思い出した。
http://www.koikadit.net/Envrac/ev_sterne.html
もう少しひねりが効いてるとよかったかも。

カヴス・カヴス

解説にもある通り、カルヴィーノ「冬の夜ひとりの旅人が」の影響が色濃い。プラス元ネタとしてコルタサル短編もあるらしいのだが、未読なのでわからず。ちゃんとコルタサルを読まなくちゃなあ。
あと72ページの「神」は「誰」の誤植だと思われる。

お薬師様

元祖ゲーム・ブックであるコルタサル「石蹴り遊び」。あとはメビウス循環形式の幻想小説になっている。

カルヴィーノ「宿命の交わる城」の諸橋大漢和辞典ヴァージョン。なるほど、まだこういう手があったか、と感心。

これはあとがきではない

マグリット「これはパイプではない」。最後にこういうのを持ってくるのはなかなかニクイ。
google:Ceci n'est pas une Pipe


異色掌編のほうは割愛したが、一番感動したのは、一番短い「隣町」だったりする。

(わかってる人)豊崎由美の解説もすこぶるよい。こういう実験的なのが年に2・3冊くらい出版されると幸せなんですけどねえ。