ザディグ萌え(ヴォルテール)
まあ別に奇書というわけではないのだが、ヴォルテールの短編は時代的にぶっとんでいる。
ミクロメガスはシリウス星人が太陽系を旅するSFだし、ザディグは超絶推理が炸裂するミステリだ。しかもフランス革命より前、十八世紀中盤に書かれた小説なんだから驚きである。
有名なカンディードは、打ち切り漫画の様な超ご都合主義冒険譚。これも非常に皮肉が効いていてイイ。でもこれライプニッツの予定調和論に対する皮肉なんですよね――ライプニッツはこんな単純じゃないですよ、と一応弁護しておく。
中でもザディグの第三章「犬と馬」で披露される超絶推理は興味深い。ホームズが「緋色の研究」で披露した推理のように、外見的な手がかりだけで深層を見事言い当ててしまうのである。ちなみにこの推理、ウンベルト・エーコの「薔薇の名前」でもパクられている。(ただこの説話はヴォルテールよりも更に昔の元ネタがあるらしい)
ヴォルテールといえば歴史の授業でも習う啓蒙思想家だが、これらの小説を読むのに哲学的な予備知識は必要ない。というより啓蒙しやすいように短編小説(コント)という形式をとっているのだから、読んで伝わってきたことが彼の思想なのだ。ひねくれた内容を通して真摯な思想が仄見えてくる。
ザディグは青空文庫でも読めます。
図書カード:ザディッグ 又は 宿命
カンディード―他五篇posted with amazlet at 05.07.04ヴォルテール―ミクロメガスposted with amazlet at 05.07.04
真に萌えたるは
ヴォルテールも好きなのだが、本当に萌えなのは彼の愛人でもあったシャトレ夫人ことエミリ・ド・ブルテーユだ。
日本では「数学史のなかの女性たち」しか文献がない*1が、この本の記述を読む限りでも、かなり良いキャラである。数学・科学・語学に秀で、ニュートンの「プリンキピア」をフランス語に訳していたりする。女性の知性が認められていた時代だったならば、下手をするとヴォルテールより有名になっていたかもしれない。
数学っ娘萌えな人々のために……(男装とかもアルヨ)
数学史のなかの女性たちposted with amazlet at 05.07.05
*1:もし他にあったらぜひ教えてください