言葉を数えろ(筒井康隆「残像に口紅を」)

なんで「ボキャブラリ解析ツール」を作ったのか……
頭の片隅にあったのは、筒井康隆の「残像に口紅を」だったと思う。
西洋には伝統的に最も使用頻度の高いeを使用せずに詩や散文を書く、リポグラムという手法があるが、それの日本語版、それもとびきり高度な奴をやってのけたのがこの小説だ。
章が進むたびに世界からどんどん言葉が消えてゆく、「な」が消えれば「鍋」が本当に消えてしまう。そして最後には……

ストーリーが弱いという順当(笑)な意見もあるが、ここまでくるとストーリーなんてどうでもよくなってしまう。筒井康隆は胃に穴を開けながら書き上げた、その得体の知れないパワーは感じられるだろう。

後に柳瀬尚紀との対談で、「今度は語が減ってゆくバージョンをやりたい」と語っていた。一度使った単語は二度と使えなくなるという制約を課した小説。それは今のところ実現していない。

しかし驚くなかれ、英語でそれをやってのけた強者がいる!
Doug NuferのNever Againだ。
http://www.ubu.com/contemp/nufer/nufer.html

英語は全然ダメなので、どのくらいちゃんとしてるのかはわからないが、なんだか凄そうな気はする。
こんなの訳せるのは柳瀬尚紀くらいしかいないだろうから、是非とも日本語にしてもらいたいもんだ。

ちなみにこれをテキストファイルに直し、整形して、ボキャブラリ解析したところ、10数語ほど重複単語を見つけた。*1
しかし3回以上の重複は見つからなかった、すげー。

*1:残像に口紅を」でもルール違反はある