フォン・ベルタランフィ「一般システム理論」

マーク・デーヴィドソン「越境する巨人 ベルタランフィ 一般システム論入門」 - モナドの方へに引き続き、「G・S・T! G・S・T!」と言いたいがタメに読んだ本家ベルタランフィ。
うおお、難しい。「G・S・T! G・S・T!」とか浮かれてる場合じゃない。数式や統計データなどがバリバリ出てくる、まさに論文で、現役を退いた身としてはかなりハードな代物だった。

まず、言及される文献があまりに多岐にわたりすぎていて驚かされる。
ベルタランフィが大好きなクザーヌスに始まり、デカルトライプニッツを始めとした17世紀の哲学、もちろん近代から現代までの自然科学、各種工学、社会学、さらには文学まで。広範な知識が次々と披瀝される様は、もはや奇書と言ってしまいたいくらいである。
そして、一般システム理論がサイバネティクスやシステム工学に繋がったんだよ、という結果報告を含め、かなり大風呂敷を広げながらも、全然、たためていない。そもそもたたむ気もないのだろう。とりあえず全力投球するぜ、という気合いに満ちている。
それだけに、新しい学問を展開してゆくんだ、という意欲に燃えた本を読んでみたい人にはピッタリだろう。

本書では、一般システム理論に共鳴して展開していった学問として、

を挙げている。ひとつをとっても今も花形の分野が多く、それを包括的に考えようという一般システム理論がいかに壮大な計画であるかが伺えるだろう。

個人的に、本書で気になった点のひとつは、これまでの科学では機械と生命の違いすら示せなかったことを反省し、生命体の持つ有機的システムを精密に定義しようと試みているの所だ。生命が、外部とのやりとりを続ける開放した系でありながら、定常状態を保っている、というところに主眼を置いてい考察してゆく。

もうひとつはベルタランフィがサピア・ウオーフ仮説に非常に興味を持っている点だ。これは言語の概念が思考を支えているという仮説である。もちろん、これをバカバカしいモノと一笑に付す議論があることを踏まえながらも、それでもこの仮説の考えに一般的な問題が潜んでいるというのである。
そこでユクスキュルの環境学説を持ってきてサピア・ウオーフ仮説との類似性を検討し、遠近法主義というのを打ち出す。つまり、この世界というものがデジタルに認識・決定されるのではなく、有機的に生成してゆくという世界観に行き着くのだ。もはや単純な二項対立ではなく、そこにはクザーヌスの言葉の通り対立物の一致が重要になってくる。

このようにしてベルタランフィは、従来の還元主義的な科学を超えてゆこうとしたのである。

一般システム理論―その基礎・発展・応用
ルートヴィヒ・フォン・ベルタランフィ 長野敬 太田邦昌
みすず書房 (1973/01)
ISBN:4622025221