アルフレッド・ベスター「分解された男」

ポール・アルテ「カーテンの陰の死」 - モナドの方へと同時購入。
Amazonの送料無料金額、1500円に達するために、いつ買ってもいい文庫をいくつかストックしてある。本書はそのうちの一冊。

人の心を透視することができる超感覚者が数多くいる未来。犯罪計画はすべて筒抜けになってしまうので、人殺しなんて滅多に起きない。そんな未来世界で見事に殺人を実行した主人公と追いつめる刑事との心理戦が見所である。ストーリーについて話してしまうとネタバレにならざるを得ないので、そこはオールスキップ。まあ読んでください。

1953年に書かれたこの小説エスパーという単語が連打されるので古くさく感じるが、物語それ自体は古典的というか普遍的である。ハッキリ言ってしまえば某神話と全く同じ話である。オールタイムベストの常連といのうのも、うなずけるというもの。
そして同時に未来的な作品でもある。実際、超感覚というガジェットを電脳とハッキングにすれば、そのままサイバーパンク小説になるだろう。

もうひとつ面白いと感じたところは、登場人物の名前等にも表れている斬新な表現だ。「@キンズ」「ワイガ&」「1/4メイン」など俗語が転化したような記号的な登場人物。そしてエスパー同士の会話は、段組を分割することで高速な会話を表現したりしている。
このような手法はB・S・ジョンソンあたりがやりそうなことで、SFとポストモダン小説が接近しているということがよくわかる。