飯田隆「クリプキ―ことばは意味をもてるか」

手軽に読めるわりに内容の詰まった哲学のエッセンスシリーズの中でも、どちらかというとマイナーな哲学者を扱った一冊。 クリプキのそれもウィトゲンシュタイン解釈にテーマをしぼり、言語や記号の意味についての面白い考察を紹介している。あらゆる言葉は、…

転職します

11月から東京で働きます。 東京近郊のみなさま、よろしくお願いします。

「チャールズ・バベッジ―コンピュータ時代の開拓者」

言わずと知れたコンピュータの先駆者バベッジの伝記と実績を簡単にまとめた本。 読み所は、バベッジの開発していた「階差機関」「解析機関」の解説の部分である。どちらも非常にわかりやすく説明がされており、中学生レベルの数学がわかってれば充分理解でき…

E・A・ポオ「ポオ評論集」

『ポオ詩と詩論』は読んでいたのだけれども、白鯨の新訳などで有名な八木敏雄が訳したと聞いて、復習がてらに「詩作の哲学」「詩の原理」を再読した。内容はアルス・ポエティカ(E・A・ポオ「詩と詩論」) - モナドの方へで書いた通り。 おそらくは後から…

オルダス・ハックスリー「すばらしい新世界」

ちょっとした必要性があって読んだ。まず、世界国家の中心地であるロンドンで、人間の人工孵化の様子が懇切丁寧に説明される。専門用語が乱舞するその冒頭は、まるで映画『攻殻機動隊』やイーガンの『ディアスポラ』を思い起こさせる。 この世界では胎児の自…

レーモン・クノー「青い花」

スゴイ!でも絶版! 夢と歴史(=物語)をテーマにした壮大な実験的な小説である。本書にはオージュ公爵とシドロランという二人の主人公がいる。 シドロランのほうは現代(と言っても1960年代)のパリらしきところで、河船に乗って暮らしている。 一方、オー…

高山宏「かたち三昧」

東京大学出版会の雑誌『UP』に連載分「かたち三昧」に、漱石論を加えた、ページ数は少ないながらもエッセンスが詰まった高山学の見事なベスト盤。高山ファンは必読である。全63回の「かたち三昧」はほとんど職人芸。1章2ページで、連想ゲームのように怒濤の…

「護法少女ソワカちゃん 第二回電奇梵唄会」レポート

運営ブログのほうで書いていた梵唄会のレポが完結を迎えたので、ご報告いたします。 私事にかまけていたり、色々考えていたら、時間がかかってしまいました。そのうちいいことあるかもね(仮):ボクとmonadoの梵唄会〜事前準備編 そのうちいいことあるかもね…

ヒュー・ケナー「機械という名の詩神」

テクノロジーが文学にいかなる影響を与えたか? を検証するという著作。 電子機器が発展した今でこそテクノロジーと文学という繋がりは容易に連想できるものの、これが書かれた1987においてはなかなか受け入れられなかったのではないかと予想される。今にな…

満員御礼!「護法少女ソワカちゃん 第二回電奇梵唄会」

2009.6.13(土)新宿ロフトプラスワンにて開催された『護法少女ソワカちゃん 第二回電奇梵唄会「如是我聞 核的窮理 はくちょう座X-1」』に恥ずかしながら出演して参りました! 護法少女ソワカちゃん第二回電奇梵唄会特設サイト まさか自分がチケット即完売の…

護法少女ソワカちゃん 第二回電奇梵唄会

護法少女ソワカちゃん 第二回電奇梵唄会の生放送が決定しました。 ニコ生とustreamの同時放送という実験的な振る舞いに挑戦です。6/13(土曜)の深夜24:20頃から始まり、28:00頃まで中継される予定です。 詳しくは、こちらをご覧ください。 生中継についてのお…

ジョルジュ・バタイユ「呪われた部分」

マルセル・モース「贈与論」 - モナドの方への流れで読んだ。 これを経済学の本と言ってしまうと、経済畑の人に怒られてしまうだろう。「過剰とは美である」というウィリアム・ブレイクの引用から始まる本書は、むしろ経済学以上の人間の活動全体を射程に入…

マルセル・モース「贈与論」

レヴィ=ストロースの親族構造理論の霊感源となった古典的名著。 食料、財産、土地、労働、儀式、そして女子供までもが譲渡によって交換対象となりうる、未開社会の奇妙な経済活動を明らかにした本である。隣の部族から何かを譲渡されたらば、それ以上のお返…

「異形のロマネスク」「計算不可能性を設計する」「天体の回転について」「文学という毒」

最近、買った本。 というかバルトルシャイティスの訳書が今になって出るとかビックリ。脊椎反射で購入しました。 すでに読んだのもありますが、感想は後日。異形のロマネスク 石に刻まれた中世の奇想posted with amazlet at 09.05.24ユルギス・バルトルシャ…

凝然「八宗綱要」

とりあえず仏教に関して最低限仕込んでおこうと思って、id:ggincにすすめられたのがこれ。なんだけれども正直、専門用語多すぎ参った。ちゃんと調べながら読むと半年くらいかかりそうなので、とりあえずの読み流し、1/10も理解してない感じだ。 一応、用語解…

伊藤計劃「虐殺器官」

戦闘ものはあまり得意ではないので躊躇していたのだけれども、インタビューで黒沢清のCUREから影響を受けたと書いてあったので、やはり読まねばならないと手に取った。脳の機能が局在していて、その機能を制御できる科学力を得た近未来の物語。そこではナノ…

「Twitter本」〜「阿ノ丸」

文学フリマで、色々買い物をしてきました。 シノハラユウキ(id:sakstyle)と夏目陽(id:natume_yo)の共同責任編集による「Twitter本」の売れ行きを見に行くというのが一つの目的だったわけですが、14時前には完売だったようで、大変によろこばしい限りです。…

「護法少女ソワカちゃん 乗の巻」

あの「護法少女ソワカちゃん」がついにDVD化されました。 心のともしび:DVDの発売が決まりました 「ソワカちゃん」の検索結果のrssを購読してるかいあって、さくしゃさんよりも先に発売日を知ってしまったり。いやあ、本当に手足が震えたぜ。内容・詳細は…

「護法少女ソワカちゃん第二回電奇梵唄会」「Twitter本」

今年は色々とネットを飛び出しちゃう予定です。 護法少女ソワカちゃん第二回電奇梵唄会 「如是我聞 核的窮理 はくちょう座X-1」 すでに告知がされている護法少女ソワカちゃんのオールナイトのイベントに、登壇者のひとりとして参加させていただくことになり…

アラン・ムーア「ウォッチメン」

映画版「ウォッチメン」を見て、これは批評に困ると腕組みしてしまった。褒めるにしても貶すにしても斜めから見るにしても、なんだか言葉にしづらい。とりあえず傑作と称されている原作コミックを読んでみなければと、ちょっと値段にビビリつつも購入した。…

ジェラルド・M・エーデルマン「脳は空より広いか」

ノーベル賞受賞科学者によるクオリアとか、意識とか、いわゆる心脳問題を取り扱った本。 詩的なタイトルでありページ数もそれほどないが、中身はガッツリ理論的なので気軽には読めない。結論からいくと大変示唆に富む内容ではあるのだけれど、自分の理解がと…

小林泰三「臓物大展覧会」

小林泰三の得意とするある種のテイストにニヤリとさせられる短編集。 タイトルと表紙から想像されるようなグロくてホラーな感じというのはほとんど無し。むしろ論理的な展開とあざやかなオチが目立つ。個人的にデビュー当初から感じていた星新一っぽい風味が…

ルネッサンス吉田「茜新地花屋散華」

一部で大人気のルネッサンス吉田の初単行本。 マンガの感想はあまり書くつもりはなかったのだが、本書に関しては一言いっておかないといけない感じがした。というのも端的に開高、埴谷という登場人物名からも明らかなように、その引用される哲学、文学の数々…

「マシーン・セリバテール」

このときのクイズの賞品のひとつであったコラボ権を行使した動画ができあがりました。護法少女ソワカちゃんの作者であるkihirohitoさんと、流麗な絵を描かれる心臓さん、そのコラボにわたしがお邪魔したという感じです。 個人的なコンセプトは「初音ミクの総…

今年買ったものなど

ちょっとブログの更新がアレすぎるので、そろそろ気合いをいれて更新していきたいと思ってます。ちゃんと読んではいるんだけれども、きっちり書こうと思ってそのまま症候群にやられておりまして…… 景気づけに今年買った主なもののリストを。三浦梅園自然哲学…

「ユリイカ2009年3月号 特集=諸星大二郎」

言わずとしれた諸星大二郎の特集号……と言いたい所なんだけれども最近の若者は知らないらしい。文学で言えばカフカやボルヘスのようなことをやっていると言っても過言ではない諸星大二郎を知らないなんてもったいなすぎる!やはり自分が好きな作品の評が気に…

谷川渥「バロックの本箱」

本書の表紙にあるように、ブンダーカーマーとしてのキャビネットに詰められた博物学的品々を開陳するかのような、バラエティに富んだ作品集。 ドゥルーズの「襞」を中心に据えたバロック論に始まり、古今東西を自在に行き来しながら、批評という物語に辛口に…

伊藤計劃「ハーモニー」

生体情報のすべてが管理された社会でおこる事件と、巨大なパラダイムシフトの物語。 一読、問いとしては最高に面白い、しかしストーリー&オチはやや不満であった。まず読んでいて気になったのがetmlで、この記法が気になって気になってなかなか読み進めなか…

巽孝之編「この不思議な地球で」

不思議な世界観、奇妙な設定、センス・オブ・ワンダーを売りにするSF短編集。 物語の巧みさと言うよりは、世界設計の妙を楽しむ短編ばかりだ。 ウィリアム・ギブスン「スキナーの部屋」 ブルース・スターリング「われらが神経チェルノブイリ」 パット・マ…

「ベクシンスキー」

プレミアがついていたベクシンスキーの画集が復刊された。 ベクシンスキーの画風というのは、ややもするとポップというかゲームの絵のように見えたりすることもあり、そういう意味では比較対象にあげられるフックスの絵の方が自分としては好みなのかもしれな…