2009-01-01から1年間の記事一覧

「ユリイカ2009年3月号 特集=諸星大二郎」

言わずとしれた諸星大二郎の特集号……と言いたい所なんだけれども最近の若者は知らないらしい。文学で言えばカフカやボルヘスのようなことをやっていると言っても過言ではない諸星大二郎を知らないなんてもったいなすぎる!やはり自分が好きな作品の評が気に…

谷川渥「バロックの本箱」

本書の表紙にあるように、ブンダーカーマーとしてのキャビネットに詰められた博物学的品々を開陳するかのような、バラエティに富んだ作品集。 ドゥルーズの「襞」を中心に据えたバロック論に始まり、古今東西を自在に行き来しながら、批評という物語に辛口に…

伊藤計劃「ハーモニー」

生体情報のすべてが管理された社会でおこる事件と、巨大なパラダイムシフトの物語。 一読、問いとしては最高に面白い、しかしストーリー&オチはやや不満であった。まず読んでいて気になったのがetmlで、この記法が気になって気になってなかなか読み進めなか…

巽孝之編「この不思議な地球で」

不思議な世界観、奇妙な設定、センス・オブ・ワンダーを売りにするSF短編集。 物語の巧みさと言うよりは、世界設計の妙を楽しむ短編ばかりだ。 ウィリアム・ギブスン「スキナーの部屋」 ブルース・スターリング「われらが神経チェルノブイリ」 パット・マ…

「ベクシンスキー」

プレミアがついていたベクシンスキーの画集が復刊された。 ベクシンスキーの画風というのは、ややもするとポップというかゲームの絵のように見えたりすることもあり、そういう意味では比較対象にあげられるフックスの絵の方が自分としては好みなのかもしれな…

レーモン・クノー「あなたまかせのお話」

レーモン・クノーは有名でありながらも、その作品が正当に読まれていない作家であると思う。そういう意味では知られざる作家の未訳短編集ということにもなるだろう。 クノーは保守的な部分と前衛的な部分を両方持っており、文学的でありながらもユーモアのセ…

円城塔「オブ・ザ・ベースボール」

表題作の方はそれほど感心しなかったんだけど「つぎの著者につづく」は自分の関心領域と9割方かぶっていて吹いた。 ボルヘスの「ドンキホーテの作者、ピエール・メナール」をメインテーマとしておきつつも、作風としてはジョルジュ・ペレックに近い。過剰な…