2008-01-01から1年間の記事一覧

石井義長「阿弥陀聖 空也」

GWはソワカちゃんの影響で六波羅蜜寺に行ってきたこともあって、まあクーヤン空也上人ラブなわけです。というわけで読んでみた。空也上人の主張は簡潔だ。 いかなる人間も、ただ南無阿弥陀仏と唱えるだけで極楽に行ける。 なんと分かりやすいスローガンであ…

村井則夫「ニーチェ――ツァラトゥストラの謎」

この内容の濃さ、そして突っ込みの方向と度合い、もはや新書ってレベルじゃない。 本書は、哲学書としてのツァラトゥストラを解読するというよりは、むしろ悦ばしき知恵としてツァラトゥストラを哲学書以前の神話的小説として読み解こうという本だ。それだけ…

護法少女ソワカちゃん 電奇梵唄会「本朝OVER THE RAINBOW縁起」

信者のみなさんはすでにごぞんじかと思われますが、護法少女ソワカちゃんの上映会が決定しました。めでたい限りです。 わたくしも1ファンとして、雨が降ろうが槍が降ろうが、コンビニ弁当が不味かろうが、炊飯ジャーの中身が空っぽになっていようが駆けつけ…

ピナコテーカ・トレヴィル・シリーズ

不意にカルロ・クリヴェッリの画集がほしくなった。 以前、どこかの美術館の図書館で見たことはあったのだが、あの筆舌に尽くしがたい美しい描写をもう一度見たくて、たまらなくなったのである。 しかし入手困難なピナコテーカ・トレヴィル・シリーズのなか…

フランク・ダラボン「ミスト」

方々の噂に乗せられて見て参りました。いやあ、酷い映画だった。良い意味で。どこからがネタバレになるのかわからないが、思いつくままに書いてみたい。 この映画は、濃霧の中に何かがいる!という未知なるものへの恐怖と、人間の心の中に潜む不気味なるもの…

イアン・ディアリ「知能」

知能とはなんなのか? その指標の中でももっとも普及しているIQについての本。 考えさせられる読み物というよりは、統計データや一般的情報を淡々と記述した資料的な内容になっている。遺伝と環境とどちらが相関関係があるのか、という問題から、IQが年々向…

小林泰三「モザイク事件帳」

一応ミステリの短編集。 「密室・殺人」を読んだ人ならおわかりだろうが、小林泰三のミステリは通常のはかりでは計れない。悲惨な事件が連発するのに、なんだか明るく、ミステリというよりはスラップスティックコメディーに近い。 登場人物も一癖も二癖もあ…

「ニーチェ―ツァラトゥストラの謎」「ハプスブルク帝国の情報メディア革命」

高山宏ブログの影響で購入した本が届いた。高山センセーらしく、話題にされにくい良書を新旧とりまぜて紹介する貴重な書評ブログなのだが、100回を機に終わってしまうらしい…… http://booklog.kinokuniya.co.jp/takayama/ 寂しい限りだが、それだけに読み込…

前田愛「文学テクスト入門」

前田愛と聞いて誰が思い浮かぶかでお里が知れるでおなじみの人。 国文学者というバイアスもあってなのか、とても昔の人だと思いこんでいたので、デリダとかでてきて最初は驚いてしまった。本書は前田愛の残された文章をまとめた一冊だ。最初は固い内容なのか…

ジェシカ・ユー「非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎」

アウトサイダーアート界でも、もっとも有名でもっとも謎に満ちたヘンリー・ダーガーのドキュメント映画。 彼が数十年にわたって人知れず記された超大作絵巻「非現実の王国」と、晩年にものされた自伝、そしてダーガーを知る者たちのインタビューとが渾然一体…

マリアの心臓「少年愛の美學展―第二部―」

少年愛の美学とは稲垣足穂のエッセイのタイトルだ。このタイトルに引っ掛けて、以前には少女愛の美学という展示が行われていたが、原点回帰で少年をテーマにしている。 今回、偶然にも三浦悦子さんが新作を搬入しに来ており、いくつか話をうかがうことができ…

「クローバーフィールド」

いやー面白かった。 ネタバレがアレな映画ではあるんだけど、それなりにこの映画に興味があって、このネタに気づかない人はいないだろう。子供の頃から特撮とアニメですり込まれた日本人がピンとこないなんて有り得ないと思われる。 マンハッタンの夜にズン…

シャルム・ジェルミナール「キマイラの覚醒」について

昨日のエントリシャルム・ジェルミナール「キマイラの覚醒」 - モナドの方へは当然、エイプリルフールネタなわけですが、ちょっと難易度が高すぎたようで(苦笑)補足をしておくと、余談がヒントになっていて、 ジェルミナール(Germinal)はフランス革命暦…

シャルム・ジェルミナール「キマイラの覚醒」

シュルレアリスムが華やかなりし20世紀前半のフランスで、完全に埋没していた奇書中の奇書。しかしその内容は衝撃的で、文学・哲学・数学等に興味があるなら絶対に知っておくべき一冊だ。 あえて読んでおくべき一冊と書かなかったのには理由がある。まず極め…

「モザイク事件帳」「月光ソワレ」

小林泰三の新作「モザイク事件帳」と、ALI PROJECTのライブDVD「月光ソワレ」が届きました。 「月光ソワレ」はsecret DISCの片倉三起也が、やたらとお茶目でカワイイところが見所。 ちなみに初回特典はユニコーンのペンダントでした。もったいなくて使えない…

上野修「スピノザの世界」

平易で、それでいて奥の深いスピノザの入門書。スピノザに関しては面倒な解説書はそれなりにあったけど、とっつきやすいのはなかった。そんな薄闇に一筋の光となる良書である。そもそもスピノザのやり方は、わかりやすさではなく精密さ、そして明晰さを目的…

東京都写真美術館「シュルレアリスムと写真〜痙攣する美」

「美は痙攣的である、さもなくば存在しない」とはシュルレアリスムの旗頭アンドレ・ブルトンの言葉である。 現実を嘘いつわりなく写し取る、まさに「写真」が、夢の世界であるシュルレアリスムとどのように結合するのか……ぱっと思い浮かぶのはマン・レイくら…

「バンテージポイント」

ひとつのシーンを別視点から何度もリピートするという構造に惹かれて鑑賞した。 脚本は巧みに作られていて、ほとんど完璧と言っても良いだろう。息もつかせぬ90分だ。 あえて文句をつけるなら、綾辻行人のミステリのような「こいつが犯人か?と思わせといて…

飛鳥部勝則「堕天使拷問刑」

色々と事件のあった飛鳥部勝則ですが、帰って参りました。待ってました。 「堕天使拷問刑」といういかついタイトル通りの、そして期待通りのとんでもない話になっている。古の因習が残る日本の村が舞台なのに、なぜだかキリスト教ベースというファンタジーに…

ジェラール・ジュネット「フィクションとディクション」

言わずと知れた文学理論の巨人、ジェラール・ジュネットの小冊。文学とはなにかという問題から真っ向から対決した、薄いながらもかなり濃い内容がつまった一冊だ。ジュネットは文学をフィクションとディクションという形に分類する。フィクション、つまり虚…

「スピノザの世界」「イレーヌ」

e-mobileの契約待ち時間が長かったので、古本屋に吸い込まれてしまった。 前々から欲しいと思っていた「スピノザの世界」と気になった「イレーヌ」を購入。予想通り「イレーヌ」は絶版だったので、得した気分。スピノザの世界―神あるいは自然posted with ama…

P・K・ディック「ヴァリス」

さまざまな作業を割り込ませてしまったため、随分読むのに時間がかかってしまった。 まあ、これもなんと表して良いものやら困ってしまう小説である。普通ならば粗筋が書かれている欄を読んでも何のことやらさっぱりだし、あとがきもわけがわからない。そもそ…

「人でなしの恋」

えー、海の檻歌をやったり、ソワカちゃんを聞いたり、rubyでexsoy_botを作ったり、ソワカちゃんを聞いたりソワカちゃんを聞いたりソワカちゃんを聞いたりしておりました。 あと「人でなしの恋」を買いました。 今日から頑張って更新するよ。人でなしの恋 (い…

はたよしこ編著「アウトサイダー・アートの世界」

アウトサイダー・アート関係の書籍はほぼ網羅しているため、当然のごとく購入。これまで持っていた書籍とかぶるところも多いけど、目新しいものや、これまでは少しだけの紹介にとどまっていた者がドーンと取り上げられていたり充分に楽しめる内容になってい…

リナ・ボルツォーニ「記憶の部屋――印刷時代の文学的-図像学的モデル」

高山宏のブログで紹介されていて、おねだりして買っていただいた本。値段通りにハードだった。 印刷術が定着した16世紀イタリアにおいて、知的枠組みを規定する図像および記憶術がどのように発展していったのかを丹念に追った内容になっている。16世紀前後の…

「Boy's Surface」「幻詩狩り」

ひさしぶりにリアル書店で「Boy's Surface」を購入。折角なので衝動買いでもしようかと思い、ぱっと目に付いて面白そうだった「幻詩狩り」を合わせて買ってきた。 Boy’s Surface (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)posted with amazlet on 08.01.29円城塔 …

「第四回 monado nite」

1/26に「第四回 monado nite 〜The Wolrd is undefinition」を開催しました。今回はちょっと調子に乗りすぎて、7時間ほど喋ってしまったんだけど、最後1時間は余計だったような気がします。前回に引き続きtyoroが内容をまとめてくれました。 →2ヶ月ぶりのmon…

「第四回 monado nite」の告知

1/26(土)に「第四回 monado nite」をustream上で行います。 いつも通り、夜の9:00から開始する予定です。http://ustream.tv/channel/monado今回は「少女革命ウテナ」を中心として、マンガ、アニメ、ゲームを主題にしたいと思います。 とりあえず「なるたる…

高山宏「ゴシックな身体――“Body Criticism”に抗って」

横浜美術展で行われたGOTH展、その特別ゲストということで高山宏の講演が行われた。個人的には展示よりもこちらがメイン。以下、要項。 ミュージアムってなに?日本語だと博物館、美術館、図書館……となってしまう。 今回の展示のようなグロテスクなものばか…

ジャン・コクトー「恐るべき子供たち」

10年くらい前に読んだはずなんだけど、内容をあまりよく覚えていなかった。要するにそのときにはあまりインパクトを感じなかったのだと思う。もしかすると訳のせいだったかもしれない。今回は光文社の古典新訳シリーズということで、読みやすくなった中条省…