2008-01-01から1年間の記事一覧

中沢新一「はじまりのレーニン」

あらゆる予備知識と先入観を捨てて読んでくださいとの前書きから始まる。もともと予備知識も先入観もなかった自分としては、多少の警戒心だけを持って読むことにした。よく笑うレーニンというのを軸に、序盤こそ歴史的な背景やら思想やらに裏打ちしながら書…

I・A・リチャーズ「実践批評」

ニュークリティシズムの代表選手の一人リチャーズによる、実践的な批評をするための指南書。前半はリチャーズが学生に書かせた無記名の詩の批評であり、後半はその分析になっている。本書で追求されるニュークリティシズムの重要な思想が二つの誤謬説だ。 ひ…

サーセン日記

ここ最近の気温の急激な変化に体調がいまいちで、まとまった文章が書けない状況が続いております。 とりあえず読んではいるけどエントリーを書いてない本一覧を書いておく。 川又千秋「幻詩狩り」 円城塔「Boy's Surface」 マリー=ロール・ライアン「可能世…

クリストファー・ノーラン「ダークナイト」

悪い評判を一切聞かない珍しい映画。所詮勧善懲悪のアクション映画だろ?と斜に構えて見に行ったんだけれども、予想を上回る傑作だった。メメントの監督だし外れることはないだろうとは思ってはいたけど、脚本・演出ともにここまで作り込まれているとは!個…

東京国立博物館「対決−巨匠たちの日本美術」

運慶vs快慶に始まり、応挙vs芦雪、若冲vs蕭白といった日本画の巨匠達の、それも代表作とも言える作品ばかりを集めた夢の対決。 特に第三室、第四室は素晴らしかった。個人的には群仙図屏風などをはじめ、二度目の作品も多かったのだけれども、それでも鑑賞時…

押井守「スカイクロラ」

若者を対象にしているということで、中高生の気持ちで見た。ちなみに原作は読んでいないし、できるだけ予備知識なしで挑んだ。決して視線を交わそうとしない、人形のような登場人物。そして人間関係の気持ち悪いこと悪いこと。キャラデザの不気味さもあいま…

マサカド・インパクトを乗り切るための50冊 〜あるいは虹の解体

はじめに〜護法少女ソワカちゃんとの出会い 「護法少女ソワカちゃん」との出会いは、日課としているJ・A・シーザータグを巡回してるときであった。最初に見たのは「修羅礼賛」で、4分という短い時間に詰め込まれたネタの濃密さ、「ゆあーん ゆよーん ゆやゆ…

アントナン・アルトー「ヘリオガバルス または戴冠せるアナーキスト」

詩人によって書かれた、放埒なる王子ヘリオガバルスの年代記。 その魔術めいた文章は、もはやタイプライターでもって正確に記述された歴史というのではなく、鵞ペンでもって綴られた呪文のようである。特徴的な一節を取り上げてみよう。 ひろげた二つの腿の…

ヴァルター・シューリアン「幻想美術」

幻想美術という観点から、19世紀末から現代まで、ちょっと奇妙なアートを取り上げた、なかなかマニアックなセレクション。 http://www.oi-bijutsukan.com/item-0610009.htmlまず導入として、中世から現代までの幻想美術の解説があり、それからひとり一作品づ…

宮澤淳一「マクルーハンの光景 メディア論がみえる」

いわずとしれたみすず書房の理想の教室シリーズの一冊。このシリーズ良書揃いであるが、本書も入門書としても復習がてらに読むにしてもよくできている。「ホットなメディア」「クールなメディア」や「メディアはメッセージだ」から「メディアはマッサージだ…

「ディスカバー・マインド」他

旅先から新幹線で帰ろうと思ったのだが、時間もあるし鈍行でもいいかと思い、その差額で「ディスカバー・マインド」を購入し、乗車時間で読むというライフハックをした。ディスカバー・マインド!―哲学の挑戦posted with amazlet at 08.07.22ジョン R.サール …

「ゲームラボ 8月号」

ソワカちゃんのためにゲームラボを10数年ぶりに購入しました。いや前に買ったのはバッ活の頃だったかも。 それにしても伊藤剛せんせーがやってくれました!一応マンガのことを書かないといけない連載なはずなのに、ごり押しでソワカちゃんですよ。 その辺の…

諸星大二郎「蜘蛛の糸は必ず切れる」

漫画家、諸星大二郎による短編小説集。以下の四編を収録している。 船を待つ 諸星大二郎が得意とするカフカ風の幻想小説。不可解な殺人などのミステリの味もあるが、むしろ目眩がするような不条理な雰囲気が漂う。もっとも諸星風であるがゆえに、むしろマン…

押井守「攻殻機動隊2.0」

見る前の事前情報として、なんでこれを変えるんだろうと思っていたところがあって、気に食わんなあと思っていたのだけど、見事にそれをひっくり返された。押井守なめてました。ごめんなさい。リメイクと言うよりは新たな解釈になっていて、無印と2.0が対とな…

松下電工汐留ミュージアム 「アール・ブリュット/交差する魂」

アール・ブリュットあるいはアウトサイダー・アート。正統な美術教育を受けたことのないものによる生の芸術。 服部正の「アウトサイダー・アート」を読んでから、展覧会があれば飛んでいくようにしている。個人的にはアート=アルス(技術)論の立場をとって…

「ヘリオガバルスまたは戴冠せるアナーキスト」

前々から読もうと思っていたというのもあって、ソワカちゃん参考文献として購入しました。ヘリオガバルスまたは戴冠せるアナーキスト (アントナン・アルトー著作集)posted with amazlet at 08.07.12アントナン アルトー 白水社 売り上げランキング: 266800Am…

道尾秀介「ラットマン」

随分前に読んでいたのに書き損ねていた。 とりあえず道尾秀介をすべて読もうと思って手に取ったわけだが、ストーリー自体に引き込まれなかったというのもあって、いまいち乗り切れなかった。膨大な複線もあっさり回収されてしまったりと(特に冒頭の部分など…

「ソラリスの陽のもとに」「ユニヴァーサル野球協会」

ブックオフで100円だったので購入。「ユニヴァーサル野球協会」の表紙はナイスですね。ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)posted with amazlet at 08.07.09スタニスワフ・レム 早川書房 売り上げランキング: 151941Amazon.co.jp で詳細を見るユニヴ…

護法少女ソワカちゃん 電奇梵唄会「本朝OVER THE RAINBOW縁起」のチケットとれました!

9:50にはローソンへ駆けつけロッピーを占拠して(まあ田舎なので、使う人は滅多にいないんですが)10:00と共に予約をかけました。混雑しているせいかなかなか繋がらず、3回目のリロードでようやくゲット! これで整理番号60番とは、なんというプラチナ!どう…

「クトゥルー神話の本」

クトゥルー神話の邪神たちのアートワークや、アーカム関係の資料などを集めたガイドブック的な本。なにより表紙のラヴクラフトかっこいい!アートワークはいかにも欧米のファインアートという感じで、よく描けているんだけど、つまらないといえばつまらない…

道尾秀介「ソロモンの犬」

たまには普通の本が読みたくなってきたので、とりあえず全部読もうと思っている道尾秀介に再び手をつけた。 序盤はほのめかされこそするものの、何も起きない淡々とした展開。ようやく事件は起きるけれども、自己なのか故意なのかさっぱりわからないまま物語…

クリストファー・プリースト「限りなき夏」

いわずとしれた「未来の文学」シリーズ。 プリーストの魅力はいくつかあって 1.日常と地続きとなってはいるが超自然的でファンタジックなイメージ 2.スペクタクルな描写 3.ミステリ的な驚き などがあげられるだろう。個人的には、2と3が理由でプリースト…

石井達朗「異装のセクシャリティ」

twitterといえば女装、女装といえばtwitterという通念が流通している昨今、女装のなんたるかも知らずに下手なことは語れない、という理論派なので図書館から借りてきた。新装版も出ているようだが、古い版のもの。 ここでいう異装というのはトランスヴェスタ…

アンナ・カヴァン「氷」

美しく硬質な文体で描かれる世界は、ゆっくりと氷に覆われつつあった。そんな世界崩壊の兆しと、少女への憧憬、そのイメージが繰り返し繰り返しスパイラルを描きながら収縮してゆく黙示録。序盤こそ、オールディスの解説にあるようにキリコの「エブドメロス…

「氷」

その筋の人が声をそろえてアンナ・カヴァンが凄いというので、買わざるを得なかった。 とりあえず優先的に読みたいと思う。氷posted with amazlet at 08.06.07アンナ・カヴァン バジリコ 売り上げランキング: 1323Amazon.co.jp で詳細を見る

VQ1005を購入

何かと話題のトイデジカメVQ1005を衝動買いしてしまった。後継のVQ3007とどちらにしようか悩んだのだが、よりトイカメラっぽいという点と小型であるという点からVQ1005にした。 とりあえず何枚か試し撮りしてみた。かなりの光量を要求するらしく、まだ勘がつ…

正木晃「知の教科書 密教」

密教の全体像を、とりあえず把握できる一冊。わかりやすい入門書はこれまであまりなかったようで、とりあえずここから読み始めるというのは正解だったようだ。 密教とは何か?という根本的なことから、話題のチベット、その密教の宗教的政治的背景もザッとで…

デヴィッド・ドゥグラツィア「動物の権利」

読んでから随分時が経ってしまったのだが、思い出しながら書く。(そんなこんなで溜まってるのが、あと二冊ほどあったりする)まず本書はズバリそのまま「動物の権利」をどう考えるか? という内容である。とは言うものの自分はクジラさんがかわいそう!とい…

夏目漱石「草枕」

twitterで高校生たちが夏目漱石を読んでいたことに影響されて、ずっと積んでいた草枕を崩しにかかった。 実は漱石は、トリストラム・シャンディの批評と夢十夜くらいしか読んでおらず(なんという偏り!)、あとは坊っちゃんを朗読で聴いたくらいなので、文…

「限りなき夏」

買い忘れていたので購入。 巻末に「短編小説の快楽」の告知が載っていた。早く出て欲しい。限りなき夏 (未来の文学)posted with amazlet at 08.05.30クリストファー・プリースト 国書刊行会 売り上げランキング: 1878Amazon.co.jp で詳細を見る