押井守「スカイクロラ」

若者を対象にしているということで、中高生の気持ちで見た。ちなみに原作は読んでいないし、できるだけ予備知識なしで挑んだ。

決して視線を交わそうとしない、人形のような登場人物。そして人間関係の気持ち悪いこと悪いこと。キャラデザの不気味さもあいまって、非常に居心地の悪い映画になっている。その違和感は、計算されたものだろう。透徹したストイックさがそれを証明してくれる。
情念を揺さぶるような感動的なシーンは、TVCMで編集されてるところがすべてで、あとは静かでストイック。過剰な演出に彩られたテレビ映画に辟易している自分としては、まずこれが嬉しかった。
空中戦もストイックそのもの。BGMによる盛り上げも最小限に抑えられていて、響き渡るのはただ銃声のみだ。異常に視界の狭いコクピットと、広々と晴れわたる青空の対比の中で、敵も味方も混じり合い、わけのわからないうちに撃墜される。登場人物の死は、戦闘終了後に帰ってこなかったことで初めてわかる。実にクールだ。

そしてティーチャーという超人間的存在を軸に物語は進んでゆく。超人的存在である神を殺して、世界を革命する可能性へ向けて一歩踏み出すというのがメインテーマなのだろう。しかし簡単に世界は変わらない、ラストは悲観的だ。
それでもリング状に同じところを回り続ける世界が、ソレノイド状に展開し新たな予兆を見せることから、わずかな希望を感じ取ることができる。これまでの押井映画に比べると、かったるいシーンも少ないし明確なメッセージが提示される。そういう意味では若者向けということは良くわかる。
しかし、あそこまでやるんだったらラストはもっとサービスして、ハッキリとした閃光のような希望を提示して欲しかった。このままだと、ちょっと勘違いしちゃうひねくれた若者がいそうだ。
これから見る人はスタッフロール後のエンディングをしっかりと見すえて、そこからひとかけらの勇気をくみ取って欲しい。

つまり何が言いたいかというと、栗山千明様の掃射する弾幕で蜂の巣にされたい!ということです。

余談1

ある種の革命を促す感じといい、少女革命ウテナとどうしても比較したくなる。若者へ向けた希望という点においては、スカイクロラは弱いと感じた。

余談2

その後にNHKの特番をみたら、押井守の言うところの若者ってのは大学生だったようです。大学生相手だったら、まあこれくらいが適当かも。