セイモア・フィッシャー「からだの意識」

最近、youtubeを見るのが忙しすぎて読書が怠り気味。相済みません。
スタフォードをどんどん読もうと思っていたんだけど、ボディ・クリティシズムがあまりにも濃すぎたため、ちょっと関連する本を押さえてから先へと進もうかという思い、「手ごたえ」の消えた芸術 : Digressionsで言及されている本書を読んでみることにした。

本書は心理学者によるボディ・イメージの本である。
要するに心と体がどう関連しているかという内容だ。読むにつれて心が肉体と決して切り離せないものであることが明らかになってくる。自分の体のイメージ、身体領域を侵犯するものへの防衛反応、男女の差異、衣裳と心、死の問題……少ないページ数ながらも非常に網羅的に語られており、なかなかによいコストパフォーマンスである。

特に注目すべきは肉体と創作活動の関連性を語っている章だ。絵画や文学といった精神的なものの産物と思われるもののなかに、肉体の影響が現れるのは非常に不思議なことのように思える。しかしスウィフトやキャロルの作品に見られる肉体を誇張したような記述に、異様なものを感じることは確かだ。このあたりの分析はバフチンの理論にも通じるところがある。
また創作者の立場にある人ならば、おのが肉体に意識的になることで、新たな地平が拓けてくるかもしれない。

古い本でありながら、ちゃんとサイボーグ化する身体などにも言及しているので、新鮮みは失われていない。ややフロイト的解釈に偏りすぎるきらいがあるものの、その考察は非常に興味深く。ネタとして仕入れておくだけでも価値がある。
ラマチャンドランなど、脳科学よりの立場からの研究もあわせて押さえておけば、より立体的に理解できるだろう。

アルチンボルデスクな風景画が目印

からだの意識
からだの意識
posted with amazlet on 07.02.21
セイモア・フィッシャー 村山久美子 小松啓
誠信書房
ISBN:4414012066

余談

なぜかAmazonのユーズドでたたき売りされている。この値段なら絶対に損はない。
あれ、Amazonの著者はサイモン H.フィッシャーになってるな……