ダナ・アーノルド「1冊でわかる美術史」

美術史の概観が知りたくて読んだんだけど、美術史の本と言うより「美術史」の本だった。
つまり美術の歴史について書いてあるというより、美術史とは一体何か?という本であるということ。
まあタイトルをよく考えればわかることではある。

傑作とは何か?作者とは何か?文化との関わりは?博物館の役割は?と薄い割にはバリエーションに富んだ問題提起がされていて、よくまとまっている。また解説を含めて参考文献も数々あられているのは「1冊でわかる」シリーズの特徴だ。
この本だけの特徴として、ウェブ上で閲覧できる美術コレクションと簡単な美術用語解説もある。

やはり面白く読めたところは、美術に批評理論が応用できるというところ。フーコーデリダの理論、精神分析などがどのように美術批評に取り入れられているかがわかる。また美術というものが、実際には見る者のなかで生起されているということにも重要なポイントを置いている。本書では書かれていないけど、読者中心主義批評、受容理論との関わりを指摘しておこう。

ただ批評理論的に言うと、著者がフェミニズム批評とマルクス主義批評にちょっと偏っているのが気になった。大御所に論理的に喧嘩を打っているのは面白いし、旧来の美術史がアンチフェミニズム的であったことは否めない。それでも多少は差し引いて眺める必要はあるだろう。

1冊でわかる美術史
1冊でわかる美術史
posted with amazlet on 07.02.04
ダナ・アーノルド Dana Arnold 鈴木杜幾子
岩波書店
ISBN:4000268872

余談

「マリオ・プラーツ」という名前が出てきてキタコレと思ったら、「マリオ・ブラザーズ」だった。
朦朧としすぎ。