ウンベルト・エーコ編著「美の歴史」

薔薇の名前」などでおなじみイタリアの碩学ウンベルト・エーコ編著による、時代における美の変遷を追った文化史。
古代ギリシャから現代に至るまで、その時代時代を代表する美の規範、美の観念を概説しているので、この一冊で一通り眺めることはできる。あとは興味あるところをそれぞれ専門書にあたればよいだろう。

個人的にはエドマンド・バークの崇高美やマリオ・プラーツ「肉体と死と悪魔」のロマン主義が大々的に取り上げられているが嬉しかった。また直接に文献が示されているわけではないが、ルネ・ホッケ「迷宮としての世界」の影響もかなり大きいと思われる。
こういう高山宏が口を酸っぱくして繰り返してきた勘所みたいなのは、わりと異端だと思ってたんだけど、もうスタンダードになりつつあるのだろうか? それともエーコがそういう立場にいるということなのだろうか?

それはさておき、この本、図案も非常に多く、その変遷が見た目でわかるというのも楽しみのひとつ。実際、見ているだけでも勉強になる。
ただ良いのか悪いのか、注釈の分量が本文の倍くらいあり、しかもそれが本文の脇に添えられている。本文、図案、注釈が渾然一体となっていて、全部同時に読もうとすると頭がパンクしかねない。最初に図案を眺めておくなどして、本文だけは独立して読んだ方が読みやすいだろう。

余談

冒頭にある理想的女性(ヴィーナス)と理想的男性(アドニス)の変遷が図解されていて面白い。
モニカ・ベルッチのヌードもあるよ。