田中敏郎「不思議の森の裁判」

建石修志が目的で購入したモノ。
言うなれば「暗号の国のアリス」で、アリスが迷い込んだ不思議な森の住人は皆、暗号で話すのだった。
解読法と解読文は巻末袋とじにあるので、知識ゼロでも一応楽しめる。

それなりに暗号に詳しい人なら、解き方の推測はすぐにつくであろう単純な暗号が多い。しかし、暗号化されている文章が丸々1ページ超えとか尋常じゃない量なので、仮に解読法がわかっていても解く気は起きないだろう。たとえば土竜が喋る暗号文はこんな感じだ。

チチハル市竜巻町七 ロスアンジェルス蛇遣い町七丁目三番地一 ペキン市蛇の目町五丁目三番地二牛飼荘七号室、 ゴットホープ竜王町七丁目一番地一 ミネアポリス虎の目町一丁目五番地五脱兎荘三号室 アデレード臥竜町一丁目四番地五

これが1ページ以上続く、ほとんどナンセンス詩である。
また暗号化された文章は基本的にストーリーとはあまり関係なく、小ネタ的な感じだ。そんな小ネタの中で一番面白いのが、お金を借りる銀行ならぬ、言葉を借りる言行の話。
総合言行の最大手が「シェイクスピア言行」はいいとして、居留守を使うときは「ダダイスト新吉言行」とか、むつかしいことを語るには「はにや言行」とか、ノンバンク系では「のさか」というので大爆笑。他にもさまざまな言行の話があって、ここが一番面白い。

この本、なぜかAmazonユーズドでは98円祭りが絶賛開催中だ。建石修志の挿絵も多いので、この値段なら、まあ絵本か飾る本だと思って買っても損はしないだろう。

余談

自分の体いっぱいについている針について考えを巡らせる間に、なぜだか時計や時間哲学にハマってしまった針鼠がカワイイ。