クシシュトフ・キエシロフスキー「ふたりのベロニカ」

ポーランドとフランスで、同じ年、同じ日、同じ時刻に生まれたふたりの少女。どちらもベロニカという名前で同じ姿形をしており、音楽の才能があった。そして先天的に心臓を患っているのも一緒。お互いの存在は知らなかったが、どこかでもうひとりの自分を感じて暮らしていた。ポーランドのベロニカが心臓発作で倒れたとき、フランスのベロニカはその痛みと喪失感を感じ取る。そして、なにかに導かれるように、フランスのベロニカは本物の恋を手に入れる――。

いわゆるドッペルゲンガーものなんだけど、ポオの「ウィリアム・ウィルソン」みたいに直接対決したりするわけではなく、神秘的な形で感応しあい、片割れの死によって運命の振り子の振れ幅が大きくなってゆく。

少女を主体としたドッペルゲンガーとしては、どろどろとしたものよりは、このような静謐なほうが幻想味がでてよい。そういう意味で、一種のアーキタイプとなる作品だろう。

余談

互いに音楽をやっているということもあって、楽曲が素晴らしい。