ジェラール・ド ネルヴァル「火の娘たち」
読んでいるうちに頭の中がくらくらしてくるメタ詩歌幻想恋愛小説。ひとことでは表現できません。
面白かったのは「アンジェリック」にあるこの掛け合い。
(殊能将之も日記で引用していたけれども)
「君はディドロその人の模倣をした。」
「彼はスターンを模倣したのだ……」
「スターンはスウィフトを模倣した。」
「ラブレーはメルリヌス・コッカイウスを模倣した……」
「コッカイウスはペトロニウスを模倣した……」
「ペトロニウスはルキアノスを模倣した。そしてルキアノスもまた、たくさんの人の模倣をしたのだ……。いいじゃないか、つまりはあの『オデュッセイア』の作者ってことになっても。」
後半に収録されている「幻想詩編」の原題はLes Chimeres(キマイラ)。解説にネルヴァルの友人でもあったハイネの言葉が紹介されていて、曰く、
「女は男にとってキマイラである」
全体の幻想的な雰囲気と見事に共鳴している言葉だ。