ハワード・ヘイクラフト編「推理小説の美学」

図書館から借りたので、旧版というか研究社のもの。
原書は53編もの評論を収録している大冊で、本書では19編に割愛されている。新版の「ミステリの美学」の方も同じく割愛されているようだが、選び方が少々異なるようだ。(下記、目次参照)
最初にあとがきに目を通すと、M・H・ニコルソン*1の「教授と探偵」を論旨が曖昧だから省いたと書いてあった。おいおいニコルソンは大事だろ、と、つっこみつつ読書開始。
1946年に編纂された本であるためか、あまり今日的な話題がないのが残念だ。
これは!と思ったのは、G・K・チェスタトンとドロシー・L・セイヤーズの文章で、普遍的なテーマを扱っており面白く読めた。こちらは共に新版にも入っている。
ほかはわりとどうでもいいのが多い。
エドマンド・ウィルソンの「誰がアクロイドを殺そうとかまうものか」はある意味笑える。
探偵小説はクソだ!という文章を書いたら、読者諸賢から「おまえは本当に面白い探偵小説を読んでいない」という大量の手紙をいただいた。皆が勧める「本当に面白い」ものを読んでみたが、やっぱりどれもクソだったという内容。そして今は紙不足だから、無駄遣いはよそうねというオチ。こちらも新版に入っている。
こういう論議は永遠になくならないんだろう。
でも、こんなの載せるくらいだったら、M・H・ニコルソンを載せてよ。

ミステリの美学
ミステリの美学
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ハワード ヘイクラフト Howard Haycraft 仁賀克雄
成甲書房 (2003/02)
ISBN:488086143X

*1:ヒストリー・オヴ・アイディアズのエース