ヤン・シュヴァンクマイエル「ルナシー」

端的に言うと、精神病に悩む男がサド侯爵めいた男にたぶらかされつつ解法療法を受けるという話。
これまでのシュヴァンクマイエル映画の中では、台詞も多く、筋やメッセージもハッキリしててわかりやすい方だろう。

解放された精神病棟という設定からしドグラマグラを連想させられたが、ドグラマグラとは違う意味でヒネリが効いている。
「解放された狂気=真の自由」と「徹底した管理=理性を通した狂気」が対立し、混ざり合うというテーマは、チェコにおける共産主義の歴史だけでなく、現代社会をも痛烈に批判している。どちらの側に付いたとしても、やはり狂気なのだ。

侯爵をはじめとして、登場人物が一癖も二癖もある人間ばかりで、表情といい笑い方といい、たまらないものがある。それをシュヴァンクマイエル流のアップでなめるので、グロテスクそのものだ。
また、挿入されるストップモーションアニメや、窓の外に広がるシュールなイメージも異様ながらも美しい。

それにしても、すごい肉の量。撮影終わった後はどうするんだろう……

この本がパンフレットを兼ねている模様