フィリップ・ドゥクフレ「SOLO」

母親の付き添いで見てきた。本当はダンスなんだけど、カテゴリをもうけるのが面倒だったので「演劇」で。

「SOLO」というタイトル通り、ドゥクフレ本人が1時間以上にわたって一人で公演を行う。しかもセットや小道具もほとんどなく、使うのはカメラと照明くらいである。
それほどダンスに興味のない人間が、1時間以上もこんな内容を飽きずに見ることができるのか、と初めは心配だったんだけど、まったく問題はなかった。というか一瞬たりとも目を離せないほどに、とにかく面白かった。

なにがそんなに面白かったのか。その秘密は映像の魔術にある。
ドゥクフレを写すカメラの映像がスクリーンに映されて、カメラはそのスクリーン自体も写しているので、時に鏡あわせのように二重になり、時には再帰的に無限に反復してゆく。
技術としてはアナクロなんだけど、エッシャーの版画や、ぐにょぐにょ動くフラクタル図形のCGアニメーションを見ているような快楽、トリップ感がある。
映像、音楽、ダンス、すべてが計算された動きでなされていて、それが今見ている瞬間にダイナミックに生成されているという臨場感が更に興奮を誘う。

45歳という年齢で、あれだけ踊るドゥクフレも凄いが、タイミングを絶妙に合わせるカメラマンにも拍手を送りたい。アイデアと技術が見事にかみ合った傑作だった。

やはりルイジ・セラフィーニが好きな人は奇想天外なことを考えるものだ。
1月にはこれまでの記録をまとめたDVDも出るそうなので、ぜひチェックしてもらいたい。