港千尋「考える皮膚」

鷲田清一「ひとはなぜ服を着るのか」 - モナドの方へで紹介されていたので、手に取った本。
この本(ついでに作者も)、書いてある内容が凄いわりには、あまり有名でないような気がする。もったいない話だ。恐らく、書かれるのが早すぎたということなのだろう。
書かれたのは1993年、恐らく身体論が盛り上がっていたころだと思われる。が、ここで論じられるのは身体のなかでも皮膚。インターフェースとしての皮膚は、まさに今、語られるべき内容だ。

ただバーチャルリアリティなど技術的な部分に触れているところは残念ながら古くなってしまっている。しかし、その考察や文化論は今読んでもスリリング。たとえば原子をコントロールするミクロな操作などでは、量子を量子にぶつける作業を行わなければならない。それを触覚の世界とつなげてしまう手腕は見事。すべては触覚、インターフェースの世界なわけだ。

また文化論に付随して色々なアートが紹介されているので、それだけ見ても面白い。アフリカのンコンデ像とかキキ・スミスの作品とかヤバ凄いよ。

余談

画家のフラゴナールと、その従兄弟にあたる解剖学者のフラゴナールを対比させた章があって、二人の生涯が語られている。
それによると、画家のフラゴナールは真夏のある日、アイスクリームにあたって死んだそうで。
これからの季節、お腹を壊さないように気をつけましょう。