ジーン・ウルフ「デス博士の島その他の物語」

未来の文学第二期の一冊目は、第一期に引き続きジーン・ウルフ。相変わらず、とばしている。
巧みなロジックで組まれているので、気軽な感じで読めないのは「ケルベロス第五の首」と同じ。ガッツリ取り組む必要がある。

やはり表題作が短いながらも素晴らしい。最後の一行でニヤリとできなかったら、今後が思いやられるかも。(でもこの辺は、好き嫌いかな)
最初の三作は「博士」「島」「死」の順列組み合わせのタイトルになっている。このあたりからも、あとがきにもある言葉の魔術師という形容がふさわしいことがわかるだろう。
また文学ネタが満載で、至る所で引用の嵐。元ネタを知っている人は、なおのこと楽しめるはずだ。

ストーリーだけでなく、状況設定が生み出す哲学的問いも興味深い。例えば「死の博士の島」では喋る書物が登場するが、これはソクラテスが人間は受け答えてくれるが書物は答えてくれないという理由で嫌っていたことを思い出させてくれる。
ひとつの短編をネタに、いくらでも話題を膨らませることができそうだ。
逆に言えば、非常に濃縮されているので、一回読んだだけじゃほとんど理解できてないのかもしれない。「ケルベロス第五の首」に続き、精読が必要のようだ。

余談1

まさかSF読んでいて芭蕉の句を見ることになるとは思わなかった。

余談2

「死の島の博士」に出てくる人工知能を搭載したしゃべる本が出てくるのだが、これがアセンブリ言語でプログラムされている。コーディングしたプログラマは大変だったろうなあ。