茂木健一郎「脳の中の小さな神々」

茂木健一郎が語り、歌田明弘を聞き手とした語り下ろし。
茂木健一郎の研究テーマに関する最新科学を語りつつ、解き明かされていない部分に関しては自説を交えて説明してゆく。言葉のはしばしに茂木健一郎の文学観、哲学観がにじみ出ていて、たとえば科学主義を批判しつつポストモダニズムについて語っているところを引用すると、

目の前にいる皺くちゃのおばあさんは、その辺にいる若い娘よりも限りなく魅力的な存在になりうる。そうしたことを許容したうえで論議するのがポストモダニズムで……

文脈を外に展開できるところが科学主義とは違うと語る。「外の思考」ってやつでしょうか。
とまあ、脳科学とは遠いところを引用してしまったが、このへんが茂木健一郎の味という感じがする。

また昨今のマスメディアに見られる「みのもんた脳科学」、つまりわかりやすい答えだけを提供する安易な学問観を批判している。何々をすれば脳が鍛えられる、と結論づけられるほど脳科学は進んでないし、我々の脳はそれほど単純ではないのだ。

語り下ろしというのは読みやすい。個人的には、これまで読んできた復習という感じで読めた。ただ、ところどころ説明が詳細でない部分があったりする。本書を入門書として、ちょっと難しい「脳内現象」や「脳とクオリア」に進むといいかもしれない。

余談

本書を読んで、茂木先生が既婚者であることを知った。なぜだか独身というイメージがあったんだけど、なぜなんだろう。
奥さんセカチューを10ページぐらい読んでゴミ箱にポイしたそうです。