小栗虫太郎「完全犯罪―他8編」

ひさしぶりに小栗虫太郎スレを見たところ「デスノートは寿命帳のパクリ」という書き込みを発見した(笑)
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1120106249/
そういえば寿命帳が入ってる短編集は読んでないなと思い出し、この文庫を発掘した次第。収録作は以下の通り。

  • 完全犯罪
  • W・B会綺譚
  • 夢殿殺人事件
  • コント・A
  • 聖アレキセイ寺院
  • コント・B
  • 後光殺人事件
  • 寿命帳
  • 失楽園殺人事件

この本に収録されている主な著作はほとんど読んでいたので、とりあえずという感じで買っていたのだけれども、未読だった「W・B会綺譚」「コント・A」「コント・B」「寿命帳」を読んでみた。

「W・B会綺譚」は探偵小説家の斗南土留(となんどる)が出てきたりと、もう完全にギャグ。オチも脱力モノで笑える。

「寿命帳」はもちろんデスノートではないんだけれども、ある手紙にしたためられた予告通りに、次々と殺されてゆくというあたりや、弁護士との息詰まる心理戦(という名の蘊蓄合戦)がまあ似ていなくもないか。
虫太郎節は全開で、夜寝ていて数時間が過ぎ、もよおしてくる時間のことを「膀胱の拡張がそろそろ覚醒を刺激してくる時刻」と描写しちゃうあたりが虫太郎。こんなムシムシした描写を久しぶりに味わえたのが何より楽しかった。
ただこの作品、明らかに尻切れトンボなのが残念、ちゃんと書けばそれなりに盛り上がったような気がするのだが……

本書は、小栗虫太郎のなかでは割と読みやすい部類に入る短編が多い。また奇想天外な超絶トリックや驚くべき動機など、今の新本格への影響も散見される。
虫太郎の薫りを嗅ぎたいが、黒死館に返り討ちにされた人はとりあえずこの辺から入るといいかも知れない。

余談

上記の小栗虫太郎スレには孫?が降臨している。

余談2

ちなみに収録著作の一部は青空文庫でも読めるが、やはり虫太郎は印刷物でないと読みずらいです。