アルス・ポエティカ(E・A・ポオ「詩と詩論」)

小説を書いたり、詩を書いたりするということとはどういうことなのか?
いわゆる文学的な評価に値する美しい文章を綴るためにはどうしたらよいのだろうか?
必要なのは文才か、知識か、はたまた友情努力勝利か?

そこで推理小説を創造し、SF、ホラー、ユーモア、詩、論評、すべてのジャンルにおいて傑作を残したポオ先生にお伺いをたててみることにする。

まず手始めにポオの詩に触れてみよう。お勧めはなんといっても「大鴉」、文句なく美しい詩だ。とりあえず、その美しい詩を(できれば英文も横目で眺めつつ)鑑賞してもらいたい。
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どうだろう、ポオの文才が滲み出ているような美しさではないか?*1

「大鴉」を執筆した翌年、ポオは「構成の原理」という詩論を発表した。なんとこれ、「大鴉」の書き方を解説した作詩術(アルス・ポエティカ)の詩論なのである。
詩というのは詩的情感に基づいて、雷に打たれたような閃きの中で書くものだ、と考えている人は多いだろう。叙情的になればなるほどそうだ。「大鴉」にしたって、ポオという比類無き才能の輝きであると思っていた人が大多数だったはず。これが作詩術に基づいたものだと明かされた日には、読者は腰を抜かすというものだ。なんてったって「構成の原理」は、ここに書かれてある通りに作詩すれば、誰にだって美しい詩をものにできるよ、とでも言わんばかりのHowTo本なのだから。
過去の作品を分析した結果、詩の長さは100行ぐらいがベストと判断。リフレインには、英語で最も美しいoとrが含まれたNevermoreを採用し、そこから詩の内容を逆に作ってゆくのだからスゴイ。

ポオの着眼点は興味深い。書かれたテクストでなく、書くメソッドこそが重要だ!というわけだ。この流れは「ウリポ」にも通じる。
そもそも、発明王エジソンがそうであったように、小説界の発明王ポオはパクリの天才だった。アイデアは他人から拝借し、巧みに換骨奪胎することで、多くのジャンルで傑作を残した。新しいもの、良いもの、そこからエッセンスを盗み取り洗練させて自分の作品として昇華するという事を繰り返してきたことになる。大胆な模倣と徹底した分析、それがポオの創作の秘密だったわけだ。

詩は情感が産み出すものだなんて考えている人こそ、ポオ・メソッドを。

「言語遊戯」から「アナベル・リイたん」まで

ポオ詩と詩論
ポオ詩と詩論
posted with amazlet at 05.07.21
エドガー・アラン・ポオ 福永 武彦
東京創元社 (2000/00)
ISBN:448852205X

ポオの奇書と言えば、壮大な宇宙詩「ユリイカ」もお忘れなく。「詩と詩論」に載ってます。

*1:ちなみに私は英語は読めませんが、何か?