ポール・アルテ「狂人の部屋」

なんだか久しぶりにミステリを読む気がする。変な小説ばかり読んでばかりいたので、スイッチを切り替えるのに時間がかかってしまった。

いわくつきの屋敷と家系、あかずの間、不気味な予言、よみがえる死者……いかにもなガジェットが満載で、そのトリックも殊能センセーがおっしゃっている通り、真面目に読んでいても吹き出してしまうものだ。
しかし、その本格魂はたいしたもので、たしかに傑作といえる。特に事件のある重要なポイントが、すべて別々の意味を持ち合わせていたというところには感服。

確かに、こんなトリックで殺そうと思う奴は絶対にいないだろう。それはアルテ自身も自覚しているらしく、エピローグでそのへんに言及している。そして、最後の最後で証されるもうひとつの秘密にもニヤリとさせられる。「火刑法廷」を思い出したよ。