黒沢清「黒沢清の映画術」

いわずと知れた黒沢清監督が、インタビュー形式で子供時代から現代までを語るという自伝的内容。

黒沢清「映像のカリスマ」 - モナドの方へで見られた面白さはそのままに、その語り口は軽妙でとっても読みやすい。
本なんか全然読んでないとか言ってるわりには聡明で博学、天然なのか策士なのかわからない「変さ」は相変わらずである。

映画というのは、他の芸術形式の中でもコントロールが効かないジャンルだ。となると監督本人の能力がいくら高くても、それがまわりに伝播してゆかなければ良い映画は作れない。そこには理詰めだけでは到底たどり着かない奇跡というか、シャーマンのような神がかった能力が必要になってくる。
そこにおいて黒沢清は不思議な力を持っているようだ。本人曰く、とりあえず折り合いをつける折衷主義を徹底している。にもかかわらず、なんとなく好き勝手に、いかにも黒沢清の映画というのを作ってしまう。
もしかするとそこに黒沢清の天賦の才能があるのかもしれない。

余談

「CURE」に出てくる古いフィルムを見て、映画研究の専門家であるリュミエール研究所の所長が本物だと勘違いしたそうだ。確かにあれは(言葉通り)怖いくらい良くできてる。
そういえば「LOFT」のフィルムもよくできていたっけ。