「ラース・フォン・トリアーの5つの挑戦」

奇才、ラース・フォン・トリアードキュメンタリー映画の名匠ヨルゲン・レスがガチンコ映画バトル。
ヨルゲン・レスの短編「パーフェクト・マン」をセルフリメイクする過程のドキュメンタリーになっていて、リメイクするさいの条件をラース・フォン・トリアーが出すというもの。
その条件というのが「1カット12コマ以内」だとか「アニメで作れ」だとか「世界で一番悲惨なところへ行け、しかしそこの人々を一切録ってはいけない」だとか、ウリポの如き無理難題を押しつける。

一方ヨルゲン・レスは、無理だよ……と弱音を吐きながらも、精神安定剤を抱えながら、5通りのリメイクをなんとか作り上げる。ひどい話だ。
字幕翻訳のせいなのかもしれないがトリアー監督がため口なので、とっても偉そうなのだ。高齢のヨルゲン・レスが紳士的なのに対し、彼を尊敬するというトリアー監督はドSキャラ。あんまりに悪魔的なんで、だんだんエイフェックス・ツインのリチャード・D・ジェームスに見えてきたよ。

ヨルゲン・レスのフィルムはとても面白くて、とくにアニメは、こんな爺さんが監督したとは思えないほど、シャレている。
ドSのトリアーに対し、健気なヨルゲン・レスという構図はずっと続くんだけど、最後の5本目で軽いどんでん返しがあってニヤリとさせられた。二人ともやり手だね。

余談

二人ともアニメが嫌いだそうで。
ドキュメンタリーをもっぱらとするヨルゲン・レスはともかくとして、トリアーまでもそう発言するのはちょっと意外だった。
黒沢清が言うように、フィルムは現実しか録れないということを考えれば、アニメが嫌いな理由は分かるような気がする。トリアーは虚構的な趣向はこらすけれども、常に現実を録ろうとしているからだ。