木原善彦「UFOとポストモダン」

UFOは実在するのか?という内容ではなく、UFOやエイリアンという現象がどのようにして生まれ、社会に浸透していったのか。その時代の背景とともに探ってゆくという、いわゆるカルスタ的な本。
タイトルにもある通り、ポストモダン時代の分析であるので、引き合いに出される思想家はボードリヤールデリダ、リオタールあたり。特にボードリヤールのシミュラクラの思想がUFO現象とピタリと当てはまっている。

UFOだけでなく、いわゆるオカルト的な現象からマイナスイオン環境ホルモン、先端テクノロジーを並列に見ることで、我々がどのように未知のものと対峙してきたかが浮かび上がって来るという構図だ。
たとえばスカイフィッシュが好例。スカイフィッシュは羽虫の残像現象なので、ビデオの中にしか存在しない。つまり現実のうえに上書きされたことで生まれた奇妙な存在だ。しかし我々はメディアの中にあるものが真実だという錯覚に陥りやすい。だからスカイフィッシュもある種の不思議な実在性を持っているというわけだ。

毎日のようにコンピュータを駆使する我々も、トランジスタ一個作れない。ほとんどの人間は半導体の原理すら知らない。第一原理は隠蔽されていると言っていいだろう。
情報も同様だ。タバコが体に悪いのか、それほどでもないのか、という論議がある。こういった論議が水掛け論に陥りやすいのは、どんなに権威があろうともメディア資料が100%信頼できるということはないためだ。しかし個人では真の情報源にたどり着くことはできないし、実際にタバコを吸い続けて確かめるということもできない。
ある程度のリテラシーを持って、確率的に取捨選択するしかない。
ともすればマイナスイオンの効用を盲信してしまう我々は、実は確証に基づいた技術の時代に生きているのではなく、新たな魔術の時代に突入してしまったわけだ。そういうことを理解させてくれる本であった。


個人的には木原善彦ウィリアム・ギャディスの訳者という印象が強い。と思ってたら、「A Frolic of His Own」の部分訳が引用されていた。1センテンスだけの引用なのに6行もあるよ、さすがポストモダン
そんなわけで、ギャディスな人も要チェック。


言いよどみ、中断、繰り返し、言い直し、脱線、他人の言葉の引用などに満ちあふれ、機関銃のような会話の織りなす黙示録的狂想曲。

余談

メメックスで有名なバネバー・ブッシュってMJ-12のメンバーだったんですね。