西野嘉章「ミクロコスモグラフィア マーク・ダイオンの[驚異の部屋]講義録」

東京大学総合研究博物館で開催された「ミクロコスモグラフィア」展の解説風講義録。講義を行っているのはバルトルシャイティスの翻訳などを行っている西野嘉章である。
この展覧会は、現代アーティストのマーク・ダイオンと東京大学総合研究博物館のコラボレーションによって構成され、サイエンスとアートのあわいを漂う不可思議博物学ミュージアムに仕上がっている。ひとことで言うなら近代以前の言葉を借りて、驚異の部屋(ブンダーカーマー)と呼ぶのがまさにふさわしい。

博物館所蔵の模型や資料と、マーク・ダイオンによるインチキ化石やガラクタとしか思えない物が並列に置かれる。そこには、まるでコーネルの箱を思わせるシュールさと、見世物小屋をのぞき見る妖しさが漂う。現代科学がリンネの分類学の枠にガッチリはめられていることを嘆き、ある種の近代批判と共に驚異の部屋を再考するのが展示会の主旨である。

整然と合理的にツリー状に分類された現代の博物館を裏切って、まったく独自の分類法を持ち込んで、本物も偽物も同格に展示する。模型をドーンと見せつけられるとガーンとくる。それが実在する物でもあろうがなかろうが、そこで受ける衝撃が大事ということだ。

現代の教育に足らない物は驚異であると高山宏も語っていた。たしかに理科離れを食い止めるには、とりあえずガツーンと衝撃を与えておくのが一番だろう。そうした驚きの中でミクロコスモスがマクロカオスに向かうさまを、講義を読み進めながら堪能していただきたい。

また図案はオールカラーで64枚と大変充実している。欲を言えば、それこそ全点を載せてもらいたかったけど。なのでパラパラと見ているだけでも楽しい。

余談

凝った装丁やカラーページに比べると、本文のページが妙に軽いわら半紙みたいなチープな作りになっている。これもわざとなのか?