巖谷國士「ヨーロッパの不思議な町」

シュルレアリスム研究で知られる仏文学者、巖谷國士のヨーロッパ旅行記
四方田犬彦が解説で書いている通り、澁澤龍彦の「ヨーロッパの乳房」と比較すると、同じ畑でありながらも、その違いが歴然としている。
澁澤龍彦がヨーロッパを世界書物の1ページとして参照可能なものとして読むのに対し、巖谷國士は一枚の名画の前にたったかのように極めて直感的に素直に感動する。また有名な絵画になぞらえて風景を読み解こうとするさまは、ニヤリとさせられるだろう。そういう意味では、旅行記として読んでいて楽しいのは本書の方なのかも知れない。

また著者本人が撮りに撮った写真が大量に掲載されていて、パラパラ眺めるだけでも不思議な気分に浸れる。カラーでないのが惜しまれるところだ。

さまざまな不思議な名所が紹介されているが、気になったのが、オスロにあるヴィラーゲン作のモノリッテンという石塔。高さ17mの石塔には、なんと121人の老若男女の裸体が螺旋状に組み合わさっているという。これは本物を見てみたい。

余談

ユーゴスラビアベオグラードに訪れた際、「?」という名のレストランで食事をし、更に「?」というタバコを買ってスパスパ吸っている。ちなみにレストランの方は名前が決めきれずに、いっそのこと「?」ということになってしまったらしい。
はてな」は旧ユーゴにもあったんだ!