阿部謹也「中世の窓から」

日本の、そして現在の常識からは想像も付かないような中世の日常が描かれている。とりあげられるテーマは中世における、貨幣、靴、衣服、祭り、子供の遊び、ユダヤ人……とさまざまだ。

たとえば貨幣が呪術的な価値を持っていたために、現在のような流通のしかたをしておらず、護符のように使われていた。なんてのを眼にすると、ミシェル・フーコーの「言葉と物」を読んでいただけではわからないことが書いてあって興味深い。

一番、気になったのは子供の遊びの項目だ。
ネーデルランドの台所のタイルには子供の遊びの絵が描かれている。これを見れば中世の遊びがどんなものであるかは一目瞭然だ。
楽しそうな「ぶらんこ」とか「縄跳び」などがあるなか、「おしっこかけ」「むち打ち遊び」「格闘」なんてデンジャラスなものまで並んでいる。スカトロにSMかよ!「格闘」なんか図案をみると、完全にマウントポジションだよ!
ちなみに「おしっこかけ」は「主に大人の遊びで、たまたま水泳をしている人をみかけたとき、その人めがけておしっこをする」と説明があります。遊びでやられちゃ、たまったもんじゃないよ!

とまあ、おふざけはさておき、図案もたくさんあって、非常にわかりやすい本だった。
もともとが朝日新聞に100回に分けて連載されていたものなので、通して読んでいると同じ説明が二度出てきたりと、やや冗長な感もある。逆に言えば、興味のあるところから読み始めても大丈夫ということか。

余談

モードという概念が中世からあったというのには驚かされた。もっとも当時は新しい発明だとか、外国風という意味だったようで、流行という意味が定着したのは17世紀とのこと。