ジークフリート・クラカウアー「探偵小説の哲学」

ベンヤミンアドルノあたりと同世代の作者による探偵小説論。というよりは探偵小説にちなんだ、その周囲の考察と言うべきだろうか。
正直な話、かなり難解。具体的な話もでてくるのだが、基本的には観念論によって分析がなされている。ひさしぶりに難しい本よんだよ、という感じ。薄い本なのに読むのに時間がかかってしまった。

特に初っぱなの「圏域」は難しい。ここで挫折してしまう人が多いんじゃないか?というくらい。
とりあえずそこそこ読みやすくて面白いところは「ホテルのロビー」。この章では、探偵小説における脇役達の無名性を考察している。今の探偵小説にはホテルのロビーが出てくることは少ないので、厳密性は欠けるが「館もの」くらいな感じで解釈しながら読んだ。
挫折しそうな人は、これと「探偵」の章くらいは目を通しておいたほうがいいだろう。

ちゃんとした書評は、こちらにまかせます。
http://www.so-net.ne.jp/e-novels/hyoron/syohyo/237.html

この書評にも書いてあるが、読んだばかりの、「最期の審判の巨匠」についての言及があったのが、ちょっと嬉しかった。やっぱアレはミステリじゃないよなあ。

探偵小説の哲学
探偵小説の哲学
posted with amazlet on 06.02.14
ジークフリート・クラカウアー Siegfried Kracauer 福本義憲
法政大学出版局 (2005/01)
ISBN:4588008110

余談

訳者が「途中、勤務する大学で難しい問題が生じてさらに遅延することになったが、これは言い訳にならないだろう」と書いていて、高山宏とか、どこも大変だなあ、と思ったら、案の定都立大学ですか。首都!