レオ・ペルッツ「最後の審判の巨匠」

ボルヘスが惚れ込んだ、という文句に負けました。晶文社ミステリの一冊。
翻訳されたのは最近だが、書かれたのは80年も前のことである。作者のレオ・ペルッツという人はミステリ畑ではなく幻想文学の人であり、代表作「第三の魔弾」は国書刊行会の世界幻想文学大系に納められている。

本書なのだが、ばっちりミステリの体裁をとっている。思わせぶりなモノローグ、不可解な自殺、謎のダイイングメッセージ、妖しい登場人物、もったいぶる探偵。もう完璧。
そのため、どんなどんでんがえしが来るのかと期待してしまうわけだが……ミステリでこのオチはないでしょう、というのが正直な感想だ。
もっとも作者自身、ベンヤミンに「汽車旅行の伴侶に最適な推理小説」と評されて、ぶち切れたというのだから、過度のミステリ的な期待は禁物である。
とはいっても、つまらないの?と聞かれれば、そんなことはなくて充分に面白い。
オチがアレというのはあるのだが、このオチが成立してしまう環境が当時のウィーンにあったのかなと思うと、なんだか感慨深いものがある。もうひとつ、タイトルの持つイメージが美しいので、そういうところに注目すべきだろう。

注意

ペルッツ問答」という後書きは、かなりネタバレなので最初に読まないように。