ハワード・ヘイクラフト「娯楽としての殺人」

旅行のお供にした本。なぜだかAmazonに登録されていない。
キャスリーン・グレゴリー・クライン「女探偵大研究」 - モナドの方へで引用されまくっていた、60年前に書かれた探偵小説論。古いです。アガサ・クリスティがまだ現役の頃です。
内容を分析した評論というよりは、史学的な側面が強い。前半2/3は1890〜1940年代イギリスとアメリカの探偵小説史に割かれている。後半1/3ほどが探偵小説一般論となっており、ハウツーから物知りクイズ(しかも、けっこうふざけた感じ)まである。

ハウツーでべからず集が列挙されているのだが、一番最初に出てくるのがこれだ。

密室の謎は避けよ。今日でもそれを新鮮さや興味をもって使えるのは、ただ天才だけである。

うーむ。密室は60年前から使い古されているネタだったんだ。今でも連綿と受け継がれているのを知っている我々からすると、なかなか感慨深いものがある。

全体的にな評価としては60年前の本とはいえ、今日的な問題に通じる指摘が数多くある。ミステリに興味がある人は読んでおいて損はないだろう。悪く言えば60年前からそれほど進化していないってことでもある。
日本では新本格以降、特に叙述トリックが磨き上げられたという印象がある。日本は本格ミステリ大国らしく、現在の海外の潮流はよく知らないのだが、叙述トリックの翻訳可能性とかを研究したら面白いと思う。誰かやってくれないかなあ。

トリビア

「モルグ街の殺人」は、草稿段階では「トリアノン・バ街の殺人」だった。

マージョリー・ニコルソンあるみたい

本書の参考文献を見ていて気づいたこと。

ハワード・ヘイクラフト編「推理小説の美学」 - モナドの方へではマージョリー・ニコルソン載せてよと連呼してしまったが、「推理小説詩学」の方に載っているようだ。「推理小説の美学」と二分冊にしたんですね。
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