超世界の麗人像(セルジュ・ルタンス展)

会場は銀座のハウス・オブ・シセイドウ。カーテンに仕切られた、まるでお化け屋敷のような真っ暗な通路の奥にセルジュ・ルタンスの美人像がスポットで妖しく光っていた。

セルジュ・ルタンスの作品は資生堂のCMを通して誰しも一度は見ているはずだ。自分がセルジュ・ルタンスをしっかりと認識したのは、西垣通の「麗人伝説 セルジュ・ルタンスと幻の女たち」リブロポート(絶版)を読んだときである。彼の作品は掛け値なしに美しい。というか美しいという言葉以外、なんと言っていいかわからない。しかし、それは地上にある美ではなく、世界の違う天上の美しさなのだ。美人というよりは、まさに麗人という感じである。

ルタンスの麗人には、多くの場合ボディーがない。機械のようなもので覆われていたり、あったとしても真っ黒に塗りつぶされていて非人間的な装いになっている。国籍不明の真っ白な顔だけが、くっきりと浮かんでいる。それらを彩る装飾品には西洋的な甲冑からアフリカの仮面の意匠、日本の武者鎧まで、バラエティに富んでいるのに統一されたデザインでまとめられている。そこにおいて止揚されるのは、西洋と東洋の垣根を越えた超世界の麗人像なのだ。
これまで見ることのできなかった映像作品もあり、時間があればすべて見ていたかった。惜しみつつも次の会場である渋谷へ……

それにしてもハウス・オブ・シセイドウは雰囲気がよいところだ。次の展覧会は「生の芸術 アール・ブリュット」展だそうで、ヘンリー・ダーガーも来るらしい。こりゃ行かなきゃ。