伊藤進「怪物のルネサンス」

中世からルネサンスの人々が怪物という存在をどのようにとらえていたかをつまびらかにする本。
怪物と聞くとドラゴンとかユニコーンとかいわゆる幻獣を連想する人が多いかもしれない。本書では、そういった幻獣は少なめで、むしろシャム双生児や両性具有等のフリークスに重きをおきている。

中世において、怪物やフリークスたちはmonsterすなわち不幸を警告するものであった。カトリックの神父たちは神のからの警告として、彼らを民衆に見せつけた。まさにこれがdemonstrationである。
フーコーの「言葉と物」以前の世界において、怪物たちはカトリックの教義と共に量産されていた。日本における妖怪の受容とはまた違った文化がそこにはある。
こういうことも押さえておかないと、魔術的なルネサンスという不思議な世界は理解できないのではないだろうか?

まさに近代が始まるところまでが本書のカバーしている領域であり、最終章では現代のフリークスたちへの含みを残しつつしめている。レスリー・フィードラーの「フリークス」をこれから読もうかなと思ってたところなので、橋渡しに丁度よかった。